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酷い夢 ※アンパンマン視点
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今日の目覚めは最悪だった。
酷い夢を見たんだ。
ばいきんまんが、僕の目の前からどんどん遠ざかって行く。
追いかけても追いかけても追いつかない。
どんなに声を振り絞って名前を呼んでも振り返ってすらくれない。
そして最後には僕が何も出来ないまま、ばいきんまんは見えなくなってしまう。
自分の叫び声で飛び起きるなんていうのは、これが初めてだった。
もう二度と体験したくない。
重い身体を引きずって洗面所に行くと、鏡の中の自分は目元が赤くなって少し腫れている。
きっと寝ている間もずっと泣いてたんだ。
「はは…、情けないなぁ」
本当に情けない。夢の中まで追いすがって。
全部自分のせいなのに。
気持ちを切り替える為にも、冷たい水でいつもよりも長い間顔を洗った。
目の腫れが引いてきた頃には大分気持ちも落ち着いてきて、着替えて下に降りるとジャムおじさんとバタコさんが出掛ける準備をしていた。
「ああ、アンパンマン起きたのかい」
「はい、おはようございます。何処か行くんですか?」
「昨日までの配達の量が想像以上に足りていなくてね、皆に配る事が出来なかったから今日も行ってくるよ」
そう言ってジャムおじさんは焼きたてのパンをどんどんカゴへ入れていく。
「朝ご飯とお昼ご飯は用意してあるから自分で食べてくれる?」
「はい、わざわざありがとうございます」
バタコさんは机の上の2食分のご飯に埃除けの布をかけると、ジャムおじさんがパンを入れたカゴを持って外へと出て行った。
食パンマンとカレーパンマンも配達に行ってしまったのかもう居なくなっていた。
2人がチーズと一緒にパン工場を出て行ってしまってから、1人でする事もなく椅子に座っているとどうにも居心地が悪くて、バタコさんが用意してくれたパンを食べてパトロールに出掛ける事にした。
「はぁ……」
結局朝のパトロールは何も無く無事に終えることが出来た。
でも頭の中にはずっとばいきんまんの事があって、正直パトロールにきちんと集中出来ていなかったかもしれない。
ああ、もう駄目じゃないか。
僕は皆の正義の味方なのに。
頭を冷そう、冷たいシャワーでも浴びて。
それから午後のパトロールに行こう。
次はちゃんと、ばいきんまんの事を考えたりなんかしないで、真面目に。
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