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迷子
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勢いよく入った部屋の中は、昼だってのに薄暗かった。
俺様が割った窓から降り注ぐ光が余計に中の暗さを引き立たせている。
そんな部屋のベッドの上で、アンパンマンは布団にくるまっていた。
驚いたように少し見開かれた瞳は、悲しく歪められた後、いつもの余裕そうなたれ目に戻った。
「何しに来たの。」
「何って、お前が引きこもったっていうから、その、……」
よくよく考えてみれば、こいつが引きこもったところで俺様には得しか無いし、わざわざ来てやる道理もない。
でもカレーパンマンに言われたからきたって素直に言う訳にも行かねぇし……。
「どうせカレーパンマンあたりに行ってやれって言われたんでしょ。」
「ぐっ」
見透かされてる。
俺様の反応を見たアンパンマンは、小さくため息をつくとひらひらと手を振った。
「カレーパンマンには僕から適当に言っておくから。帰っていいよ。」
「はあ? 帰っていいって、お前はいつまで引きこもるんだ? 正義の味方のくせに!」
帰っていいという言葉に少しムカついて言葉を返すと、アンパンマンは自嘲気味に笑った。
「やめたんだ、正義の味方。」
「……は?」
脳みそが理解を拒む。
初めてだこんなの、俺様は天才なのに。
だって、だってだって。
やめる? 正義の味方を? アンパンマンが?
意味がわからない。
「もう、いいかなって。食ぱんマンもカレーパンマンもいるし、僕が居なくなったところで―――」
「ふざけるなッ!!!」
衝動のまま、アンパンマンの胸ぐらを引っ掴む。少し苦しそうな声をあげたけど、そんなこと気にしている余裕はなかった。
「お前が居なくなったら街のヤツらはどうなるんだ! 俺様はそう簡単にやられてやんないぞ!」
俺様が叫んでも、アンパンマンは何も言わない。
「俺様は、ライバルのお前じゃなきゃ、っ、お前を倒したくてっ、」
もう色んなことがぐちゃぐちゃになって、言葉に詰まってアンパンマンを見やると、そこには迷子みたいな悲しい顔をしたアンパンマンが居た。
ああ、なんでお前がそんな悲しそうな顔―――。
気がついた時には、アンパンマンにキスをしていた。
コイツに教えてもらった、角度を変えてなんども、唇をくっつけるだけの優しいやつ。
アンパンマンから驚いたような声が上がるが気にしない。
ぎゅっと抱き締めて、頭を撫でてやりながらキスを繰り返すと、次第に大人しくなった。
仕上げに鼻先やでこや頬、唇のはしにキスの雨を降らせてやって顔を離すと、眉根を寄せて顔を赤らめたアンパンマンがいた。
ふは、なんだ、案外可愛い顔できるんじゃないか。
俺様の心が端からゆるゆると蕩けていって、温かさに包まれる。
今なら言える。何も恥ずかしがることなんてない。
「すきだ。」
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