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出会い
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空にぽっかりと浮かぶ月を見上げ、いつもより少し遅くなった帰宅時間に俺、森川稜太は知らずと足早に歩いていた。
ケータイの時刻を見れば午後11時過ぎ。
くそぅ、店長め・・・高校生をこんな時間まで働かせやがって・・・
つい先程までいたバイト先のコンビニの店長に悪態をつく。
まぁ、元はと言えば無断欠勤した奴が悪いんだけど。
もしかしたらこのままばっくれる可能性もありそうだ。
しかも、客が多かった。こういう時に限って何故か多いんだよ。
労働基準法にひっかかるぞと心の中でぼやく。
でもまぁ、たんまりお土産(廃棄だけど)をもらったから今日のところは良しとしよう。(ほんとはダメだけどw)
俺そんなに根に持つタイプじゃないし。
もっかいケータイで時間を見て、帰宅時間短縮のため普段は通らない公園を突っ切ろうと足を踏み出した。
6月独特の湿った空気がまとわりいてくるようで少し汗ばむ。
時間帯が遅いせいもあり生い茂る木々達や虫の鳴き声が何となく気味悪くて足が速まった。
公園をもうすぐ抜け出せるというところで、自販機の前にたむろしている良からぬ集団が目に入った。
やべ、・・・不良の集団じゃん・・・
近道だからと、いつもは通らない公園に足を踏み入れた自分を恨んだ。
引き返そうかと思ったけどそれも今更な気がしてとりあえず突っ切ることにする。
そんな漫画みたいに絡まれることはないだろうし。
さっきよりも近づけば集団がよく見える。
・・・うん、けっこう柄悪い。
どうか絡まれませんように!
怖いので視線は集団から外して、見ないように見ないようにと必死に足を動かす。
軽く駆け足になってた。
真横を通り過ぎようかという時、集団の1人が俺の進路を阻んだ。
「・・・っ!?」
いつの間に移動したのか、目の前に壁が、
予想だにしなかった状況に一気に頭がパニクる。
そして自分を恨んだ。
ここ通ろうとか思った少し前のおれしんでしまえ。
しかし顔面蒼白する俺にはお構いなしにそいつはニヤニヤしながら口を開いた。
「こんばんは~」
「え、や、あの・・・っ」
「な~ちょっと金貸してくんね?俺たちちょっと困ってんだよ」
そいつの言葉に全身の毛穴という毛穴から汗が吹き出した。
こ、これが俗に言うカツアゲってやつか・・・!!
今までの人生で一番の非常事態に脳内で警報が鳴り響く。
やばいぞ、と。
恐怖心から身体がカタカタと震え出したのがわかった。
「おい、お前聞いてんのか」
「ひっ・・・!」
目線を合わせて凄まれる。思わず声になりきれない音が喉から漏れた。
「ぶっ、はははっ!こいつビビってんぞ!」
間近に声が聞こえて視線を少し横に流せば、増えている、いかにも柄の悪いやつら。
いつの間にか俺に絡んでるヤツ含めヤンキー5人に囲まれていた。
思わず視界が涙で滲んだ。
「だから聞いてんのかって言ってんだろ!」
「!!!!」
答えられない俺に痺れを切らしたのか、俺に絡んでたヤツが胸ぐらを掴んできた。
正直な話、この異常な状況に脳内処理が追いついてないわけで普通に返事なんかできるわけがない。
情けないけど見るからに怯えてんのわかるだろ!
理不尽過ぎるだろーがっ(泣)
「金出せっつってんだよ」
「す、すすすみませんっ持ってないです・・・ッ」
「あ゛あ゛?」
事実を述べたまでだった。
財布すら持ってきてないし。
しかし、ソイツは相当気が短いらしく。
舌打ちをしたと思ったら拳を振りかざすのが見えた。
ああ、終わった・・・
俺はこの世の終わりを感じた。一瞬にして脳内を走馬灯が駆け巡る。
お父さんお母さん、にいちゃん、妹よ、さようなら。先立つ不幸をお許しください・・・
目を思い切り閉じて、歯を食いしばった。
ゴッと鈍い衝撃音がした。
が、何故か襲ってこない衝撃にそっと目を開ける。
俺の胸ぐらを掴んでたヤツは何故か俺の視界から消えていて、代わりに目に飛び込んできたのは金髪の男。
「いたいけな高校生囲んで何やってんだ、アンタら」
その男は気怠げに言葉を吐いた。
見れば俺を殴ろうとしていた男が足元に沈んでいる。
この金髪の男がやったんだろうか・・・。
思いもよらない男、というか救世主の登場に動けずにいるとその男が俺に視線を向ける。と思ったら腕を引かれて、その背に隠された。
「大丈夫?」
金髪の声とは違う優しい声音に視線を上げれば今度は茶髪の男が俺をのぞき込んでいた。
さっきからいたんだろうけど金髪の男に意識がいっていて全然気がつかなかった。
「あ、はい・・・」
反射的に返事をすると茶髪の男はにっこりと笑みを返してくる。
これぞ甘いマスク!という表現がピッタリなイケメンだった。
「な、何だてめぇらっ!!」
俺と同じく呆気に取られていた不良達だが状況が飲み込めたのか、わっと襲いかかってきた。
途端にこっち、と茶髪の男に手を引かれ、金髪の男と距離をとる。
咄嗟に金髪の男を振り返れば、襲いかかる不良達を返り討ちにしている。
怖くないと言えば嘘になる。
でも初めて見る喧嘩はまさに鮮やかで、ヒーローみたいだと思った。
非現実的な光景に目が離せずにいればあっという間に不良達をのしてしまった。
すごい・・・
最後の一人が地面に沈めば金髪の男はふうっと大きく息を吐き出して、少し離れた俺達のところへ歩いてくる。
隣にいる茶髪の男は見慣れた光景なのか普通にお疲れ~っと緩く笑みを浮かべていた。
「大丈夫か?」
「あ、はいっ」
俺の前まで来たと思ったら投げかけられた質問にあわあわと返事をすれば、金髪の男はそうかって笑って俺の髪をくしゃくしゃと乱した。
「あ、あのっ」
「ん?」
頭を撫でられるという行為に何と無く気恥ずかしさを感じながらも、口を開くと優しい笑みを返されて思わず胸がドキッと高鳴る。
んん?ドキっ?
「た、助けてくださってありがとうございましたっ」
若干自分に疑問を感じたけどそのまま深々~っと頭を下げた。
人生の終わりさえ感じたからな。ほんとに命の恩人だ。
どういたしまして、と降ってきた声に頭を上げれば、金髪の男はまた優しい笑みを浮かべた。
さっきは余裕がなくてわかんなかったけど、この金髪の男もかなりのイケメンだ。
茶髪の男はほんと甘いマスクなイケメンだけど、金髪の男はまた違ったイケメンで精悍な顔立ちをしている。
思わず目が離せなくて凝視していると、金髪の男がふっと笑う。
その表情にまたも心臓が早鐘を打ち始めて自分でもわからないそれに疑問は膨らむばかりだった。
「家、どこ?」
「へっ?」
唐突な質問に思わず声が裏返る。
意図が読めなくて、目をぱちぱちとしていれば、ククッと笑いを堪えながら送るよって金髪の男が言った。
こ、この人、何ていい人なんだろう。
見た目だけで言えば不良に分類される容姿をしていてあんまり近づきたくない部類の人なんだけど、ほんと人は見た目で判断しちゃいけないと、今日この日ほど強く思ったことはないです。
「や、あ、あの、そんな、申し訳ないですっ」
助けてもらった上、さらに家まで送らせるなんてあまりの申し訳なさに無意識に手を振り振りと断ってみたけど、いいからってまた髪をくしゃくしゃと乱された。
普段なら髪ぐしゃぐしゃとか嫌な筈なんだけど、何でだろ嫌じゃないや。
・・・じゃなくて。
「ほ、ほんとに大丈夫です!そこまでしていただくなんてほんと申し訳なさ過ぎて・・・」
最後ら辺はちょっとごにょごにょと小声になってしまった。
相変わらずその手は俺の頭の上で、尚且つ優しい表情を浮かべているその人に恥ずかしくなってきて視線を宙に彷徨わせてしまう。
「・・・・」
そんな俺を見てその人はうーんとちょっと考えて、また俺の髪をぐしゃぐしゃにした。
「わわっ!?」
「やっぱ送るわ。こんなんあった後だし、な?」
拒否権なんかねぇよってちょっと悪戯っぽく笑うその人に急激に顔が熱くなったのを感じた。
「フジ!」
「なに~」
いつの間に移動していたのか、ちょっと離れたベンチに腰を下ろし、茶髪の男、フジさんはケータイをいじっていた。
視線だけ寄越して緩い返事を返してくる。
「俺こいつ送ってくるわ」
フジさんは投げかけられた言葉に一瞬驚いた表情をした。
「送ったら戻ってくっけどとりあえず後頼むわ」
「了解~」
フジさんは一瞬だけニヤッとしてヒラヒラと手を振った。
俺はと言うと顔の熱を鎮めるのに必死で、フジさんの面白がるような表情には気づかずにペコリと頭を下げた。
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