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再会
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「いらっしゃいませー」
チャイムが鳴ると同時に入ってくる客に向けて声をかける。
今日も俺はいつも通り勉学に勤しみ休む暇なくバイトなうです。
やる気も何もない月曜日。
休み明けで何となく客もだるそうに見えた。
非現実的なあの夜から3日。
俺は変わらない日々を過ごしていた。
し か し。
あれから俺の思考回路はおかしくなったようで、考えることと言えばイチヤさんという救世主のことばかり。
何をやっていてもあの人が脳内を占拠しているのだ。
強くてかっこよかったな〜とか。
優しい笑顔を思い出すと何故か会いたくなったりとか。
偶然にでもまた会えないかなとか思ったりして。
・・・いや、でも、それはあの時ちゃんとお礼してないから!
だからお礼するためなんだ!
・・・なんて、誰に言い訳してんだろう。
うん。やっぱ何かどっかおかしい。
男に会いたいとかちょっと変だよな。
何だろなー、今までにないこの自分の状態にちょっと戸惑いさえ覚える。
うーんうーんと一人で唸っていればまた入店チャイムが鳴る。
「いらっしゃいま・・・」
ドアに顔を向ければ俺の動きが止まった。それはもうキレイにピタリと。
入ってきた客に俺の視線は釘付けとなった。
「お、稜太じゃねぇか」
俺に気付き柔らかい笑みを携え、ようと言ってレジまで寄ってきたのは今まさに会いたいと思っていた人だった。
「こっこここここここんばんは!!!!」
突然のイチヤさんとの再会に心の準備なんて皆無だった俺は盛大にどもった。
ああ、情けない・・・
自分の情けなさにがっくりと項垂れる俺を知ってか知らずかイチヤさんは口元をフッと緩めた。
ああ、明るいとこで見てもイチヤさんは羨ましいほど安定のイケメンでした。
「78番二つ」
「はっはいッ」
言われた番号のタバコを二箱とる。
マニュアル通りに商品を渡すまですると安定のイケメンが何故か楽しそうに笑う。
「お前ここでバイトしてたんだな」
「あっはい!」
会いたいと思っていた人との遭遇は本当に嬉しいもので。
にやける口元を必死で抑えるけど自分でも顔が崩れているのがわかって、自分が痛い。非常に痛い。
・・・変な顔になってないかな。
「稜太、何時上がり?」
「!!!!!」
「?、何時に終わんの?」
驚き破顔している状態で固まる俺を不思議そうに見ているイチヤさんは首を傾げながら聞き直してきた。
え、だってこれって終わるの何時ってこの後話さない?的な流れじゃない?
脳内が勝手に期待に満ち満ち溢れている。
「もっもうすぐあがりです・・・」
プルプルと震えながら熱くなる顔を隠すように俯きがちに答えれば、ふっとイチヤさんが笑ったのがわかった。
「時間あるか?」
「あ、ありますっ」
「じゃ、外で待ってるわ」
頑張れよって言ってぽんぽんと俺の頭を撫でるとイチヤさんはタバコ二箱を片手に店の外へと消えて行った。
「なぁなぁ森川」
イチヤさんが完全に店から出て行くと同じシフトで入っていた高田さん(ちなみに2個上)が声をかけてきた。
「何ですか高田さん」
「いや、何つーかお前にああいう知り合いがいるとか意外だな」
「おっきなお世話です」
刺々しく返すけど高田さんは全く気にしていないようだった。
時計を見ればもうすぐ時間だ。
レジ締めも終わったし、あとは交代の人を待つだけ。
終わる時間が今までで一番待ち遠しく感じた。
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