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好きなのかな。
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あの後、俺たちはすぐ学校を出た。
何故なら俺がバイトだから。
学校近くの駅まで一緒に帰って、俺だけ先に帰る。
いつものことだけど、ちょっと寂しいと思ってみたり。
正直俺も皆と遊びたいけど、遊ぶためにもお金が必要なのです。
我が家は、高校生になったら小遣いは自分で稼ぐという厄介な方針だから致し方ない。
しかも、楽しみでならないことができてしまったのだ。
なんて思いながら、レジに立っている俺です。
今日は時計を見ながらソワソワしています。
何故なら。
イチヤさんがまた来てくれるから。
昨日の帰り際、また明日って約束して帰ったんだ。
嬉しすぎてニマニマしてたらお客さんに変な目で見られたけど、気にしない。
終わる時間まであと少し。
早く終われって思ってたら、外からバイクの音がした。
客だって思ってガラスから外を見てたら、ちょっと見慣れてきた金髪が見えた。
ブワッと体温が上昇する。
心臓も一気に跳ね上がった。
ドアを開けて入ってきたのは期待していた通りの人で。
俺を見るなり、イチヤさんは優しげに目を細めて笑った。
「よ」
「こ、こんばんはっ」
今日も安定のイケメンです。
イチヤさんはペットボトル二本を取ってレジに来た。
もちろんタバコも忘れずに。
俺の頭を撫でたイチヤさんは、外で待ってるって言って出て行った。
その背中を見つめて、何だかふわふわした気持ちになった。
バイトが終わって外に出るとイチヤさんはバイクに凭れて紫煙を燻らせていた。
そんな姿も様になっていて、思わず見惚れてしまった。
『恋するオトメ』
そうまこっちゃんに言われてから、変に意識してしまっている。
今だってトクトクと高鳴る胸が、きっとそうだって言ってるみたいで。
「イチヤさん」
「お疲れさん」
ゆっくりと近づいて名前を呼べば、イチヤさんはいつものように優しく口元に弧を描く。
「やる」
そう言って差し出されたのは、先程イチヤさんが買っていったペットボトル。
「あ、ありがとうございますっ」
くすぐったい。
自然と笑みがこぼれた。
少しだけ話して、帰るかってイチヤさんはバイクに跨がる。
その様子に首を傾げると、手渡されたヘルメット。
「え?」
「乗れよ、後ろ」
「え、あの、」
「今日はバイクで送ってく」
そう言ってイチヤさんはハンドルにあった自分のヘルメットを手にとった。
「ほら、早く乗れよ」
こ、これは本当に申し訳ない。
フジさんちに来たついでだと思ってたけど。
このためにわざわざ来てくれたのがわかるから、すごく嬉しい分申し訳ない気持ちが膨れ上がる。
ヘルメットを手に持ったまま躊躇う俺の頭に、イチヤさんの手が乗せられた。
くしゃりとその手が髪を撫でる。
「いいって。俺が送りたいんだ」
何で俺が考えてたことわかるんだろ。
イチヤさんは優しく笑った。
きゅうんって胸が苦しくなった。
嬉しくて嬉しくて、胸が締め付けられて、どう表現していいのかわからない。
何でか泣きそうになってしまった。
今自分がどんな表情をしてるのかわからない。
でもイチヤさんは変わらず優しい表情のままだ。
「な?」
「・・・はい」
そう答えるとイチヤさんは嬉しそうに笑った。
ドクドクと心臓の音がうるさくてたまらない。
再度催促されて、今度は大人しくイチヤさんの後ろに乗った。
俺がちゃんとヘルメットを被ったのを確認するとエンジンがかかる。
「ちゃんと掴まっとけよ」
「は、はいっ」
手をとられて、その手をイチヤさんの腰に回るように置かれた。
イチヤさんの背中に体がピタリとくっついた。
今までにない密着感に、心臓が暴れ出す。
こんなんじゃイチヤさんにバレてしまいそうだ。
「んじゃ行くぞ」
「はっはい」
動き出すバイクに、思わず腰に回す手に力が入る。
イチヤさんの表情は見えないけど、一瞬笑ったような気がした。
広い背中に身を預けて、頬に風を感じながら俺は目を閉じた。
ずっとおさまらない鼓動に、キュッて胸をしめつけられるような感覚。
おれ、イチヤさんのこと好きなのかな・・・
今まで誰かを好きになったことなんかなくて。
こんな感情初めてで、どうしていいのかわからなくて。
そんなこと考えてたら無意識にキュッとイチヤさんにしがみついてた。
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