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めーる。
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風呂も入って火照った体をベッドに沈めながら、ケータイを眺めて一人でにんまり。
アドレス帳に新しく入った名前に、夢じゃなかったって、自然と頬が緩んでた。
『イチヤさん』
ほんの一時間くらい前のことを思い出す。
自分を褒めてやりたい。
家の近くまで送ってもらって話してたら、明日の話しになって、明日は休みだって言ったら、イチヤさん、ちょっと残念そうに笑ったんだ。
何か、すごく可愛かった。
すごく可愛かった!(大事なので二回言ってみた)
次バイト入るのは金曜日って言ったら、じゃあ金曜に来るって言われて、でも何となく寂しいなって思ったら、勝手に口が動いてて。
『連絡先、教えてくれませんか』
うわわわわわわわ!
無性に恥ずかしくなってベッドの上でのたうちまわる。
自分から聞くことをあんまりしないのに、あんなにすんなりと聞けるなんて思ってもみなかった。
我ながらよく聞けたもんだ。
勝手に口が動いただけだけど。
イチヤさんもイチヤさんで『俺も聞きたいと思ってた』だもん。
心臓鷲掴みにされたかと思ったもん。
その人の名前が、ケータイの中にあるってだけで、こんなにも幸せな気持ちになるなんて。
「おれイチヤさんのこと好きなのかな・・・」
ぽつり。
自然と呟いていた。
途端に体の機能が壊れたみたいにカーッと体温が一気に上昇した。
イチヤさんに感じる気持ちは、恩人とか憧れとか、そんなんじゃ片付けられなくて。
やっぱりそうなのかなって思う自分がいる。
でもその反面。
おかしいって。
イチヤさんも俺も男なのにって。
気持ちを肯定しようとする自分と、それは不自然だと否定する自分もいる。
堂々巡りになるそれに、
はぁって無意識に溜め息が出てた。
何となく考えることが億劫で、再度ケータイの画面を眺める。
「そうだ、メール・・・」
そうだった。
後でメールするって言ってたんだった。
名前を見ただけで胸いっぱいになって満足して、危うく忘れるところだった。
「何て送ろうかな」
うーん。画面を見つめたまま考える。
とりあえず、「こんばんは」。
「・・・・・・・・」
ケータイと睨めっこを始めて早十数分。
メールなのに変に緊張して、何て送ったらいいのかわからなくなっていた。
少し打ち込んでは消して、打ち込んでは消してを数回繰り返す。
ここは、もうシンプルにいこう。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
こんばんは。
稜太です。
今日も送ってくれて
ありがとうございました。
金曜日楽しみにしてます(^^)
_______________
こんなんでいいかな。
楽しみにしてるとかちょっとうざいかな。
打ち込んだ文章をジッと睨む。
「・・・いいや、このまま送ろ」
【送信】をタップした。
「・・・・・」
お、送ってしまった。
何か変な汗かいてきた。
手に持ったままのケータイを見つめること数分。
すぐすぐ返ってくるはずないのに、ジッと待ってるままの自分が恥ずかしくなってきた。
見れば、日付が変わろうとしている。
もしかしたら、もう寝てしまってるかもしれない。
そう思ってケータイをベッドに置いた瞬間、ブブブッとバイブが鳴る。
慌てて持ち直して開いてみると、期待した通りの人だった。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
遅えよ。
俺も楽しみにしてる。
__________
それだけの文章だったけど、俺の頬を緩ませるには充分で。
胸の真ん中がほわほわしてる。
何て返そうかと迷って、またちょっとだけケータイと睨めっこ。
_______________
またメールしてもいいですか?
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
聞くのも変かなって思ったけど、聞いておきたくて、少し迷って送信をタップ。
ちょっとドキドキしながら待っていれば、
今度はすぐに返事が来て、また俺の口元が緩んだ。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
いつでも。
待ってる。
________
いつでもしていいんだって思ったら嬉しくなって、誰もいないけど真っ赤になった顔を枕に押し付けて隠した。
その後は、おやすみなさいって送って、イチヤさんからもちゃんと返ってきて、口元は緩みっぱなしだった。
メールのやり取りだけで、こんなにも幸せいっぱいになるなんて知らなかったな。
ほころぶ頬をそのままに、ゆっくりと目を閉じた。
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