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もっと知りたい。
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程よく眠りを誘う先生の声を聞き流しつつ、考えるのは放課後のこと。
隣に座ってる蓮を横目で見てどうしようかと考える。
さっきは嬉しくてつい返事をしたけど、イチヤさんが教室に来るってことは、蓮とイチヤさんが鉢合わせてしまうということだ。
教室に戻った時に蓮は謝ってくれたけど、でもたぶん蓮には気持ちの良いものではないだろう。
蓮はイチヤさんがこの学校の不良のボスかもしれないって思ったから、心配してああ言ったらしいし。
ほんとどうしよう。
後でマコトに相談してみようかな。
ぼんやり、イチヤさんの顔を思い浮かべる。
イチヤさんに聞きたいことがいっぱいあった。
早く会いたいな。
「ごめん!俺呼び出しくらってたの忘れてた」
先に帰っててと頭を下げて、蓮は慌てて教室を飛び出して行った。
その背中を俺とマコトとまこっちゃんと見送った。
蓮には悪いけどそれに少しほっとしている自分がいる。
さて、帰り支度をしようという時。
机の上に置いていたケータイが震える。
誰だろうと思っていれば、それはイチヤさんからで、メールを開くと今から行くって書いてあった。
律儀な人だなって思って、自然と口元を弛ませていれば横から視線を感じる。
見れば案の定、マコトだった。
「なんだよマコト」
「別に~、にやけてんなぁって思っただけ」
「うるさいな」
自分でも自覚しているだけに反論が出来ない。
感謝しろよって言ったマコトが嬉しそうに笑った。
そんなの理由はわかっていて、あんなに心配していてくれてたマコトのことだ。元気になった俺に、安心してくれているのだ。
「あ、そういえばマコト」
「なに?」
「マコトがイチヤさんたちと知り合いだったなんて意外だったよ」
世間は狭いよね、あはは、なんて笑いながら言った途端、機嫌良く笑っていたはずのマコトの表情が固まって、目に見えて狼狽え始める。
え、なに、俺何か変なこと言った?
こんなに動揺しているマコトは珍しくてどうしたんだと訝しげな視線をじーっと送り続けてたら、マコトは目を合わせようとせずに口を開いた。
「まー、その、あれだ。中学の時ちょっと世話になった時期があったんだよ」
その言葉に疑問は膨らむ。
あの人達に世話になったとは一体どういうことだろう。
明らかに接点なんてなさそうなくらいタイプが違うんだけど。
気になるものは気になる。
それはどういうことかと、口を開きかけた時。
「稜太」
低くて優しい声に名前を呼ばれた。
ドキリと高鳴る心臓を宥めつつ、声がした方を見れば、教室の後ろのドアから非凡人4人が顔をのぞかせていた。
「遅くなって悪い」
「ぜっ全然大丈夫ですっ!」
しっぽを振る犬のごとくイチヤさんにかけ寄れば、イチヤさんの目が優しく細められてぽんぽんと頭を撫でられた。
イチヤさんたちと合流して、とりあえず移動することになった。
どこに行こうか、なんてみんなで言いながら廊下を歩いててわかったことが何個か。
実はまこっちゃんも非凡人な皆さんと知り合いだったこと。
まこっちゃんはお兄さんいるし、何かわかる。
あと、マコトとフジさんが結構仲が良さそうだということ。
名前呼び捨てで呼んでたし、今だって2人で並んで親しげに話してる。
何となくだけど、マコトの雰囲気が普段とちょっと違う気がして、昼にマコトが言ってたことを思い出した。
付き合ってる人ってフジさんなのかなぁ、なんて思っていれば、イチヤさんの声が降ってきた。
「稜太」
「はい?」
「悪いな。あいつらついて来るって聞かなくて」
隣を歩くイチヤさんを見上げれば、ちょっと困ったように笑っていて、そんな表情に口元がつい崩れてしまう。
「大丈夫ですよ。何か、楽しいです」
そう答えたらイチヤさんに髪をくしゃくしゃと乱された。
一緒に来るとは思ってなかったけど、本当に嫌な気持ちは無くて、自分の知らないイチヤさんが見られたようで嬉しかったんだ。
でも同時にイチヤさんのこと何にも知らないってことにも気付いた。
もっと知りたいって思うのは、欲張りかな。
見つめれば、優しく目を細めて微笑むイチヤさんに、心臓が高鳴り始める。
やっぱり好きなのかも、なんて思ったのは内緒だ。
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