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自由人。
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「てかお前何やってんの。バイトは?」
塀を背凭れに二人で話していれば、チラリと店に視線を送るマコトにあははと苦笑が漏れた。
「寝不足でふらふらしてたら帰って良いって。で、店出たら銀司さんに捕まったんだ」
「ふーん。そりゃ災難だったな」
肩を竦めて言うマコトに思わず吹き出した。
そういえばマコトと銀司さんのセットって珍しい。
意外と仲良いんだなって思ってピンクの髪を思い出した。
「マコトたちは何してたの?」
「あぁ、俺ら今から桐吾たちのとこに行こうと思ってたんだよ」
「そうなんだ」
やっぱりフジさんと仲が良いよなって思っていれば、マコトが何か思い付いたみたいな顔をした。
「なあ、稜太も来ねえか?本山さんもいるし」
「えっ壱也さん?」
どうしよう。
ものすごく行きたいけど帰らせてくれた店長に申し訳ない気持ちもあってものすごく悩む。
うーんうーんと本気で悩んでると、そんな俺にマコトが苦笑した。
「銀司さんが来るまでに考えとけよ」
「う、うん」
さてさて、どうしようかと思っていれば、マコトの視線を感じるのは気のせいじゃないだろう。
視線を上げると案の定、マコトと目が合った。
「な、なに?」
「いや、何つーか。ひでえ顔だなって思って」
「ひど…。寝不足って言ったじゃん」
「そりゃわかるけど。顔?っていうより表情?」
何かあった?って聞いてくるマコトに驚きを隠せない。
いつものことだけどマコトには何故かバレてしまう。
観察力が良過ぎる友人に隠し事はできないなって改めて思った。
言おうか迷ったけど誰かに聞いてほしい気持ちもちょっとあって、ためらいつつも口を開いた。
「…昨日ね、夜、蓮が家に来たんだ」
「蓮が?」
「うん。放課後のことすごい怒ってて。また、壱也さんに関わるなーって」
苦笑を漏らしてしまう俺にマコトがまたかよって小さく溜め息を吐いた。
「陵太はどうしたいんだよ」
「俺は、壱也さんと一緒にいたいよ」
「じゃあそれでいいじゃん」
「うん。でも俺欲張りだからさ。蓮にもわかってほしいんだよ」
大事な幼馴染だし。
そう付け加えるとまたマコトが小さく溜め息を吐いた。
それから視線を落としていた俺の頭にマコトの綺麗な手が伸びてきた。
「あいつ意外と頑固だからな。頑張れよ」
ぽんぽんと撫でられて変に恥ずかしくなる。
「もう!子ども扱いすんなっ」
口を尖らせて頭の上にある手を退けるとマコトがはいはいって大袈裟に肩を竦める。
何だってみんな子ども扱いするのか。
不機嫌さを隠さずにいる俺にマコトは気にしてないようで。
「ま、俺も何か考えとくよ」
「…ありがと」
なんだかんだ優しいマコトにやっぱり良いヤツだと思ったのは言うまでもない。
それからどうでもいい話をすること数分。
ふと銀司さんが戻って来ないことに気付いた。
「ねえマコト、銀司さん遅くない?」
「たしかに。何やってんだあの人」
呼んでくると言ってコンビニに向かうマコトの背中を見送った。
ケータイを見るといつの間にかお昼を回っていて、この後ほんとにどうしようかと再び悩み出す俺。
とりあえず二人が戻って来ないことにはどうしようもないから、大人しく二人を待つしかないんだけど。
まだかなと思っているとバタバタと足音が聞こえて、ケータイから顔を上げるとピンクの髪を揺らしつつ駆け寄ってくる銀司さんが目に入った。
「ごめん、リョウチン!立ち読みしてたら時間掛かっちゃった」
えー。なにこの人自由過ぎる。
半ば呆れたような顔をしていると、銀司さんの後ろから現れたマコトは完全に呆れ果てた表情をしていた。
「じゃあ行こっか」
「え?」
満面の笑みで俺の腕を掴む銀司さんに思わず頭に疑問符が浮かぶ。
でも銀司さんはそんな俺に構わずにグイグイ引っ張りながら歩き出した。
マコトは何か言うわけでもなく溜め息をひとつ溢して俺らの後について来た。
「えっ?えっ?ちょっと、銀司さん?」
「ほらリョウチン早く行くよ!」
「えっ俺何も言ってないんですけどっ」
「壱也にリョウチン連れて行くってもう言っちゃったもん」
「えええええ!?」
知らない間に俺の予定は決定されていたらしい。
全く悪びれる様子のない銀司さんに半ば引きずられるように駅に向かったのだった。
願わくば店長に俺たちの姿を見られていませんようにっ。
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