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よろしくされました。
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連れて来られたのは、普段立ち寄らないというか絶対に近づかない繁華街の少し外れ。
不良な方々が多く集まるという有名な界隈だ。
初めて訪れたこの場所は昼間だからか行き交う人はちらほらと少ないけど、そのほとんどの人がそんな風貌をしていて、身が縮こまってしまうのは致し方ない。
ていうか、そんな人たちから挨拶されてる銀司さんとマコトって何?
わかるような、でもわかりたくない俺はできるだけ考えないようにするのに必死だった。
非現実的なこの状況についていけなくてだんだんと頭が痛くなってきた頃、やっと銀司さんの足が止まった。
見上げると所狭しと並ぶビルのひとつの味気ない寂れたビルが見える。
そのビルの一階部分だけ煉瓦造りの壁を模した造りになっていて、雰囲気的に喫茶店というかバーというかそんな感じだった。
でもそこには看板とかもなくて、更に言うなら扉に『close』の札が掛かっている。
首を傾げていると、銀司さんが躊躇いもなくその扉に手を伸ばした。
カランカランと音を鳴らして開いた扉の中に銀司さんは入って行く。
先に入った銀司さんに入るように促されておずおずとそこに身体を滑り込ませた。
「やっほー」
「お、来たな」
銀司さんが声をかけると聞こえたフジさんらしき声に顔を向ければカウンター席に座る壱也さんと何故かカウンターの内側に立つフジさんが目に入った。
「こっこんにちはっ」
目が合うと同時に壱也さんの目が優しく細められて、一瞬で体温が上がるのがわかった。
壱也さんに手招きをされて傍に寄って行けば隣に座るように促されて、素直にそこに腰を降ろした。
「昨日ぶり」
「はっはい」
俺が座るなり甘い笑みを溢す壱也さん。
もうなんていうか。
その表情があまりにも甘くて、その微笑みに卒倒してしまいそうだ。
頬を赤く染める俺に壱也さんはふっと笑うといつものように俺の髪を撫でた。
「何か飲むか?」
「えっおっお構いなくっ」
変に緊張してしまって変な返事をしてしまった。
恥ずかしくて顔を俯けるとそんな俺にまた壱也さんはふっと笑って、カウンターの内側に立つフジさんに頼んでくれる。
ほんと恥ずかしすぎて自分が嫌だ。
ふと視線を店内に巡らせる。
中の空間は外の壁と同様、室内も煉瓦を模した壁になっていて、店内全体がダークブラウンで統一されている。
カウンターから見える棚には色んな種類のお酒が並んでいて、ここがバーなのだとわかった。
とても落ち着いた大人な雰囲気に自分が場違いな気がしてきて何だか落ち着かない。
ソワソワと視線を泳がせているとコトンと目の前にグラスが置かれた。
「あ、ありがとうございます」
「どういたしまして」
ニッコリと微笑むフジさんに同じようにニコニコと笑い返しつつグラスに口をつけた。
冷たいジュースを流し込めば喉が潤っていく感覚に喉が渇いていたことに今更気付いた。
しかも、すごく美味しくて一気に半分も飲んでしまった。
「フジさんこれすごく美味しいです」
「ノンアルのカクテルだよ」
「そうなんですか!俺こういうの飲んだの初めてです」
ジュースだと思ってたからちょっとびっくりしたけど、ジュースより美味しいかもしれない。
再びグラスに口をつけようかと言う時、フジさんの目元が優しく崩れた。
「それ、俺からのお祝いね」
「え?」
「壱也をよろしくね」
ふふっと笑うフジさんに一気に顔が熱くなった。
マコトも銀司さんも知ってたからフジさんが知っているのは当然なんだけど。
改めて言われると非常に恥ずかしい。
「…はい」
蚊の鳴くような声で返事をするだけで精一杯だった。
でもそんな俺にフジさんは嬉しそうにニッコリと笑うと今度はマコトたちのほうに行ってしまった。
そんな俺たちのやり取りを見ていた壱也さんも何だか嬉しそうに見えて、やっぱりちょっと気恥ずかしかった。
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