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初めての。
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そっと離される身体が少しばかり名残り惜しい。
俺をのぞき込むその表情はやっぱり優しかった。
ゆっくりと重なる影にああキスされるんだって妙に冷静な頭は、近づく端整な顔を目に焼き付けてそっと瞼を降ろした。
慈しむように柔らかく唇をついばむその行為にちょっとだけくすぐったさを感じて口元が緩むと、少しできた隙間に濡れた何かが侵入してくる。
歯列をなぞるように動くそれはすぐに壱也さんの舌だってわかった。
「んっ…ふ、」
口内を探るような舌の動きに鼻から抜けるような声が上がる。
初めて聞くそんな自分の声にあり得ないくらいの羞恥に襲われて一気に体温が上昇する。
恥ずかしくてキュッと壱也さんの服を掴むと壱也さんの手が頬に添えられた。
「ん、んっ…」
舌を絡め取られて漏れ出る声は止まらない。
時折聞こえる濡れた音に更に羞恥心は煽り立てられ、クラクラと目眩さえも感じた。
初めての刺激に慣れない身体からは完全に力が抜け落ちてしまって、いつの間にか壱也さんの腕が身体を支えるように腰に回っていた。
壱也さんの服を掴む手はただ悪戯に服に皺を作るばかりであまり意味をなしていない。
ようやく唇を解放されたのは息も絶え絶えになった頃だった。
力が入らない身体をくたりと壱也さんに預ければ、包み込むようにギュっと抱きしめられた。
キスがこんなにも気持ちいいなんて知らなかった。
酸欠と長いキスが終わったことで一気に緊張が解けて意識が霞む。
ふわふわする頭を壱也さんの肩に乗せたまま目を閉じれば、思いがけずそのまま意識を手放した。
カーテンの隙間から差し込む光が眩しくて、身じろぎをすると思いのほか動かない身体に少し違和感を感じる。
眠たくて重い瞼を重力に逆らって押し上げると、目の前に整った顔があって一瞬身を固くする。
寝起きにこのドアップは心臓に悪い。
ドキドキとうるさい心臓に早く治まれと動かせない身体を一層固くした。
少し落ち着いた頃、ちょっとだけ体勢を変えようとするけど俺を抱き込むように回された腕に気付いて断念した。
ずっとこのまま寝てたんだろうか。
自然と俺の視線は目の前にある規則正しい寝息をたてる壱也さんの寝顔に注がれる。
じっと見入ってしまうのは仕方のないことで。
寝ていてもかっこいいとかずるいと思う。
顔のパーツ一つ一つが整っていて、正直羨ましいと思うほど。
形の良い眉に、影を作る伏せられた目元。
すっと通る鼻梁に、これまた形の良い薄い唇。
視線が壱也さんの唇に辿りついた瞬間、昨夜のことが唐突に蘇る。
一気に襲ってくる羞恥と申し訳なさがクリアになった頭に相当なダメージを与えた。
昨夜、初めていわゆるデ、ディープキスなるものをしたわけなんだけど、キスが終わって壱也さんに抱きしめられたところまでは覚えてる。
でもそこからの記憶が全くもってない。
うん、寝ちゃったよね。
でもどうしてあの状況で寝るんだとあの時の俺を叩き起こしてやりたくなる。(あれ?デジャヴ?)
あんなに夕方寝てたのに俺の身体は一体どうなってんの。
だけどそんなこと思ってももう過ぎてしまったことはどうしようもない。
小さく溜め息を溢して壱也さんの寝顔を再び眺める。
壱也さん怒ってないかな。
心配するのはそんなことばかり。
また小さく溜め息を吐いた。
「…ん、」
一瞬心臓が跳ね上がった。
壱也さんが身じろいで、ゆっくりと開かれた眠たそうな目に俺が映り込んでドキドキと心臓が早鐘を打っている。
「…まだ寝てろ」
じっと俺を見た壱也さんは少し掠れた声でそう言って、俺を抱え直すと再び寝息を立て始めた。
更に密着する距離に再び俺の心臓は速度を上げる。
結局寝付くことができなかった俺は壱也さんが起きるまで緊張と羞恥に耐え続けたのであった。
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