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ピンク頭。
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「大丈夫だったか?」
壱也さんとフジさんのところに辿りついて早々かけられる声に思わず苦笑した。
「俺は大丈夫です」
「俺は大丈夫じゃねえっす」
機嫌が悪いのを隠さないままブスッとした表情でマコトは不貞腐れたように唇を尖らせる。
ドカッとフジさんの隣に腰を下ろすマコトにフジさんは苦笑しつつも赤くなったデコが気になってたようで、見せてみろとマコトの前髪を掻き分けてしっかりとのぞき込んでいた。
そんな二人の様子に当てられつつ、俺も定位置になっている壱也さんの隣に座った。
途端に頭に乗せられる手に壱也さんを見ればよしよしと撫でられた。
「稜太は大丈夫だったか?」
「あ、はい、俺は何とも」
「でもボール当たってたろ?」
「・・・はい」
み、見られてた・・・
だからかと、いつもの場所じゃなくて後頭部を撫でてる壱也さんに妙に納得してしまった。
うん、何でだろ、変に恥ずかしい。
「そ、それくらい何ともないです!マコトが下敷きになってくれたおかげで怪我もなかったですし…」
申し訳ない気持ちを込めてチラリとマコトに視線を向けると俺に続いて壱也さんもマコトのほうに視線を向けた。
「もーまじ何であんなとこにあんなんがあんだよ」
「あれな…、銀司がバスケしたいっつってわざわざ使ってないヤツ倉庫から引っ張り出してここまで運んで来たんだよ」
「はあ?まじで意味わかんねえんだけど。つか桐吾も止めろよな」
「止めたに決まってんだろ。けど聞くわけねえよ、あいつが」
「…まあ、確かに。もーまじ何なんだよあのピンク頭」
優しくデコを撫でてるフジさんのおかげかさっきよりはだいぶマコトの表情が戻ってた。
でも機嫌は直らないようで、フジさんに八つ当たりするようにブツブツと言っている。
そして最早銀司さんはピンク頭呼ばわりだ。
マコト、絶対年上と思ってない・・・
でも、確かにその労力を違う何かに費やすべきだとは思ったり。
間違いなくあの人たちは違う方向にベクトルが向いてる。
青春よろしくバスケに勤しむ皆様方に呆れ気味に、体育館にでも行けば良かったのにと思っていると壱也さんがふっと息を漏らした。
「セイは散々だったみたいだな」
「ほんとですね」
「自由過ぎるのも困ったもんだな」
くつくつと笑う壱也さんにつられて自然と口元がほころんだ。
ふふっと笑いながら、さっきまで落ち込んでた自分が嘘みたいに笑えてることにちょっと驚いた。
やっぱり壱也さんの傍はあったかくて心地がいい。
優しい目で俺を見る壱也さんを見つめ返しながら、ふと蓮の顔が浮かんだ。
不良に関わるなと言った蓮に壱也さんのことちゃんと知ってもらいたい。
そして俺の気持ちもわかってもらいたい。
すぐには無理でも、絶対に。
何がなんでも頑張らなくては。
本日何度目かの決意を胸に抱いていると壱也さんの目が優しいものから尋ねるようなものに変わっているのに気づく。
「どうした?」
「えっ、な、何でもないですっ」
ドキッと心臓が跳ねる。
けど、壱也さんにバレてはいけないと慌てて平静を装うものの、あんまりにもじっと見つめられて変に焦ってしまう。
「やっぱ痛いのか?」
「いいいいいえっ!大丈夫ですっ」
心配そうな表情に更に焦る俺。
すぐに表情に出る自分が心底嫌になる。
「稜太、」
「グウ…キュルルルルルル…グルッ」
壱也さんの言葉を遮るように突然結構な音量で腹の音が響いた。
しかも変な音した!
は、恥ずかしい・・・!!
ふはっと吹き出す壱也さんに今すぐ屋上の床に穴を開けて、そこに入り込みたい衝動に駆られる。
「とりあえず飯食うか」
「は、はい…」
話は逸れたものの、笑いを堪えるように肩を震わせる壱也さんにいっそ声を出して笑ってくれと言いたくなった。
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