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日常復活
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時間は昼時、待ちに待った昼休み。
授業から解放されて騒つく教室の中、弁当を引っ張り出しつつチラリと蓮の様子を盗み見た。
今日は久しぶりに蓮と一緒に登校して授業受けて休み時間になったらくだらないこと話して笑って、
ほんと気まずかったのが嘘みたいに前と同じに戻った。
切り替え早いよなってダブルまことが感心するくらい元通りだ。
お互いの性格なのか仲直りしたらもうそのケンカは引き摺らないって、それこそ小さい頃からずっとそんな感じ。
だから長く一緒に居られるんだと思う。
なんて考えつつ手に持った弁当に視線を落とす。
半日…何事もなく平穏に過ごしてきたけど、
問題はここからだ。
そう、今は昼休み。
今から俺がしようとしているのは最早日課となってる屋上訪問だ。
蓮は少しだけ理解してくれたように思うけど、内心良く思ってないのはきっと変わらない。
だから如何に波風立てることなく、この任務を遂行するかが重要なのだ。
んーって伸びてる蓮を横目に緊張が走る。
一言、「ちょっと行ってくるね」って言えばきっと蓮は送り出してくれるはず、と思いたい。
ゴクリ、と喉が鳴った。
「……あっあの、」
「稜太行くぞ」
「………」
予想外の声に動きが止まってしまった。
声の主はマコト。
いつもどおり弁当を片手に俺を待ってる。
待ってくれてるのはありがたい。
でもマコト…そんなキレイに被せてこなくてもいいじゃんか…
人が意を決して口を開いたのに察してよ…!!
まさかのマコトに出鼻を挫かれてやつ当たりよろしく心の中で文句を言ってれば、いつの間にかまこっちゃんが到着。
更には蓮の前のイスに座ったまこっちゃんに声をかける蓮。
あれ?コレ完全にタイミング失った?
「稜太?行かねえの?」
動かない俺に再びマコトの催促の声。
今度は蓮にも聞こえてて蓮がこっちに顔を向けた。
当然視線が合うわけで。
途端に蓮はひとつ小さな溜め息をこぼした。
あ、やばいちょっと涙出そう…
「…稜太、」
「ごっごめん蓮!あの、」
「そんな気遣わないでいいって。行くんだろ?屋上」
「ぅ、うん…」
「だったら早く行けって。時間なくなるよ?」
「あ、ありがとう蓮!」
「はいはい、行ってらっしゃい」
「うんっ!行ってくる!」
呆れ顔でひらひらと手を振る蓮に自分でもわかるくらいパアッと表情が明るくなる。
単純だろうけど今の俺には蓮が神様みたいに見えるよ!
蓮の横でよかったなって感じで俺に微笑みを送ってくれるまこっちゃんにも行ってきますって言って、待ってくれてたマコトと一緒に教室を出た。
遅いって言うマコトの文句も今の俺なら全力で受け止められる気がする!
って思ってたけど意外にもマコトの文句は遅い!の一言で終わったりして。
「よかったな、蓮から許可下りて」
「うん!すっごいドキドキしたけどね」
「まあ、なんだかんだアイツお前には甘いからな」
「え、そうかな…」
意外だって思いっきり顔に出したら、マコトに絶対甘いだろって半分呆れたように言われた。
甘かったらケンカにはなってないと思うんだけどなぁ、なんて思っていれば唐突に頭をワシャワシャと撫でられた。
「わわっ!ちょ、なっなに!?」
「何か急にワシャワシャしたくなった」
「何だよそれ意味わからん」
案外すんなりと手を離したマコトはどことなく楽しげで。
文句を言うつもりだったのに俺に向けられた表情に言葉に詰まってしまった。
「ほんとよかったな、仲直りできて。俺も安心した」
「……うん」
だってあんまりキレイに笑うんだもん。
その柔らかい笑みを見てしまえば何にも言えなくなるのは当然だと思う。
…マコトにはいっぱい心配かけたもんね。
心からそう思ってくれてるのがわかるから胸の真ん中あたりがギューってなった。
「ありがと…心配かけてごめんね」
「ほんとだよ。あんま心配させんなよな」
「うん」
俺の返事を聞いたマコトはニッて笑う。
それが何だか気恥ずかしくて、でも俺も自然と頬が緩んだ。
いつもよりちょっとだけ早足で廊下を進む中、今日も屋上暑いだろうなってそんなこと話しながらもほんとにいい友達持ったなって心の底から思う俺だった。
「今日も銀司さんは元気ですね」
梅雨も真っ只中なこの蒸し暑い中、銀司さんはやっぱり今日も元気にバスケに励んでおりました。
幸いなのは曇ってるくらいかなぁ、なんて思いながら雲行きが怪しげな空を眺めてポツリと呟いた。
「アイツは無駄に元気なだけだろ」
「あはは」
呆れたような表情の壱也さんに苦笑い。
隣に座る壱也さんはいつもより少しばかり気怠げな雰囲気だ。
やっぱり暑いからかなって思いつつ、広げたばかりの弁当に今日も心の中でいただきますって合掌。
「稜太」
「ふぁい?」
呼ばれて壱也さんのほうを向けば、弁当を頬張る俺を見て壱也さんがプッと小さく吹き出した。
「リスみてえ」
クスクスと笑う壱也さんだけど地味にショックだったりするんですけど!
「悪い悪い、そんな拗ねんなって」
「……別に拗ねてないです」
おっといけない。
無意識に顔に出てたようだ。
ゴクンと口に入れてた食べ物を飲み込んで答えるけど、壱也さんは何が面白いのかまだ笑ってる。
ちょっとだけ膨れたくなるのはしょうがないよね。
そんなに俺って面白いのか…なんて思ってると壱也さんのトンデモ発言。
「ほんとお前って何してても可愛いな」
「!!!」
びっくりし過ぎてハシ落としたし。
カカカーッて一気に顔が熱くなる。
壱也さんってばいきなり何言い出すんだよぉ!!!
ていうかマコトたちもいるんですけどー!!
二人の生温かい視線が逆に痛い。
むしろ何か突っ込んでくれればいいのに…!!
だけどプルプルする俺に壱也さんから更に追い討ち。
「顔真っ赤」
「……ッ」
めちゃくちゃ甘い微笑みをいただきました。
あ、やばい。
何かプシューッて漏れた気がする。
更に真っ赤になる俺に壱也さんが楽しそうにフッと笑った。
絶対確信犯だよこの人…!
以降、壱也さんの視線が気になって全然弁当の味がわからなくなった俺だった。
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