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冴木雄也とは高校時代、何度も喧嘩をした相手である。
今は凄く真面目にやっているが、昔は少しやんちゃしてて、俺は族のヘッドを務めていた。
隣町の族のヘッドが、この冴木雄也だ。
あの頃は総長崩しと言うのが流行っていて、冴木の手下が俺達に喧嘩をよく吹っかけてきていた。
俺は一応ヘッドだったから、そこそこ強かったと思う。
冴木の手下を1人で滅多打ちにし、その次の日、俺が冴木に滅多打ちにされたという何とも恥ずかしい思い出があるわけで。
その時に出来た傷が、今も俺の腹には残っている。
こいつとは一生会いたくなかった。
「あぁ、痛むよ。ナイフ使うとかマジ頭イカレてんじゃね?お前に刺されさえしなければ、絶対俺が勝ったのに」
「それはお前が俺の仲間を半殺しにしたからだろう。お前は弱い」
「お前んとこが喧嘩吹っかけてきたからだろ。俺は弱くない」
「お前の族の方が先だったはずだ。この死に損ないが」
今ポロッとひでぇ事言ったなこいつ。
俺が死んでたら冴木は刑務所行きだったんだぞ。刺された事を察に言わなかった俺に感謝しやがれ。
生きてて有難く思えってんだ。
「……埒明かねぇわ。早くあっち行け。何でお前がこんな所に居んだよ」
くそ。紅茶が不味くなったじゃねぇかよ。
高級な紅茶だったのに…。
「何を言う。俺は今日からお前の上司だぞ」
「は?」
「だから、晴山涼太の上司は俺だ。高月部長から聞いていないのか」
うそん。最悪。
こいつの下で俺は働かなきゃならないのか?
冗談じゃない。
さっきまでの俺の浮かれた気分が急降下したじゃねぇか。
「お前には秘書をやってもらう」
「は?」
「俺の秘書をやってもらうと言っているんだ」
「なに、お前…社長かなんかなの?」
「あぁ。去年父が亡くなって俺が社長になった」
ちょーっと待てよ。
この会社の名前って何だったっけ?
えーと、えーと、名札名札。
【SAEKI不動産(株)】
そのまんまじゃん!!バカ!俺のバカ!!
「あーーーっ!!」
何で気付かなかったんだ。
いや、こいつの事なんて名前と総長以外俺は全く知らないから当たり前か。
でも社長息子の俺のイメージはきっちりしててしっかりしててビシバシ教育を受けて真面目に育っているというイメージだ。
あ、でも、逆もまた然りか。教育を無理矢理受けさせられて稀にグレるやつがいるかもしれん。
こいつはその部類に入るんだな。うん、そうだ。絶対そうだ。
「何だいきなり。あまり騒がしいと追い出すぞ」
くそ、澄ました顔しやがって。
あん時察に突き出せば良かった。
「追い出せばいいだろ!お前の下で働くくらいなら転職した方がマシだ!」
「…お前が本社に来る事になった理由は聞いてないのか?」
「聞いてねぇよ!高月部長から、社長直々に俺に来るようにと言われた、と聞かされただけだ!」
「何だ、知っているなら早い。俺がお前を呼んだ。お前が必要だからここに呼んだんだ」
意味わかんねぇー。
俺は普通の社員だったんだぞ。
それがいきなりこいつの下で、しかも秘書として働けだと?
無理無理。平々凡々な今の俺には無理だ。
「すんません。俺には無理っす」
「無理だ。俺の秘書として働いてもらう。社長命令だ」
何が社長だ!見てくれヤンキーの癖しやがって。
金髪の社長がどこに居んだよ!
……ここに居るけど。
「えー、断ったら?」
「……もう一度、腹に傷でも付けてやろうか?」
「すんません、やります」
最悪だ。
これから俺はこいつにこき使われるんだ。
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