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7、いつもの日常 -『薫さん』-
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――ピンポン。
そう言った時、丁度よく家のチャイムがなった。
『葉月くーん』
「はあ…ちょっと待っていてくださいね」
重々しく腰を上げ、玄関に向かう葉月さん。
俺はこっそりと玄関の方を覗き込んでみたが運悪く『薫さん』に見つかってしまったようで。
「おっ彼が噂の?」
「噂をしているのはあなただけですよ。…ああもう、結局上がっていくんですね」
「どーも。葉月君との浮気を疑われていた薫さんです」
「え、あ、ああ、ど、どうも……」
「ふーん。そうかそうかーうんうん。何だか迅哉君と雰囲気が似てるね。コミュ障なところとか」
シンヤ?コミュ障はほっとけよ。
「はい、もういいでしょう。全く、休みの日なのに何をしているんですか」
そう言いながら背に俺を庇ってくれた葉月さん。正直助かった。
「休日をどう使おうが俺の勝手だよ。それにここ俊也の家の近くだしね」
「なら俊也君のお家にさっと移動してください」
「冷たいじゃないか。いつもだけど。大丈夫だよ、俺年上には興味ないから」
さらりと言ってのけてるが、年下に手ぇ出したら犯罪なんじゃねえのか。
「あ、でも葉月くんとか慎二くんは魅力的だからいける」
爆弾をかましていくスタイルか。
シンジって誰だよ。
「ええ、私よりも慎二さんの方が魅力的ですのでどうぞそちらに。」
「脈アリ」
「ポジティブですね」
置いていかれている、俺。
「…一応名誉の為に言っておきますが、こんな方でも仕事場では優秀なんですよ。
私と同じ会社ですが、WEBサイト担当のフロアにいる方なんです。
私が担当している雑誌のWEBサイトはこの方が作っているんですよ」
「へえ…」
「それで、慎二さんは会社にウイルス対策ソフトを作ってくれている方。
迅哉さんは慎二さんが営んでいるお店の店主なんです。」
うん。よく分からないが。
「間違ってもこの方と何かあったりはしませんので安心してくださいね。
この方も電車で男子高校生に痴漢して興奮する性癖の持ち主なので怖くないですよ。」
いや怖いだろ。
声を大にして言いたい。
怖いだろそれ。
だが初対面の人間がいると声が出ないので眉間に皺を寄せることしかできなかった。
「じゃあ俺そろそろ。お邪魔しました」
「はい、お疲れ様でした。新しい原稿送ってありますからお願いしますね」
「はいはーい」
そして嵐のように去っていった。
何だったんだ……
「な、何だったんだ?」
「あれが貴方を何週間も悩ませた『薫さん』ですよ。
ああいう方なので家の中で話していたら貴方の生活音が電話に入ってしまうでしょう?
そういったことを嗅ぎ取る能力の高い方なので一つ一つ解説していくのが億劫で。」
「…………なんか、大変なんだな」
電話の後で葉月さんが疲れた顔をしていた理由が分かった。
悪い人ではなさそうだが、マイペースだ。マイペースすぎる程に。
ただ律儀なのか社会人としてのマナーなのかテーブルには手土産が置いてあり
美味しいよと書かれたメモが乗っている。いつの間にこんなの置いていったんだ?
ただ、うん。
俺が無駄な何週間を過ごしたことはよく分かった。
「何か………うん。ごめんな。」
「いえ、私も不安にさせる行動を取ってしまいましたので…すみません。
私は貴方が一番ですから。貴方が居なくなってしまっては何事にも手が付かなくなってしまうでしょう。
どうか私の傍に居てください。」
「……………うん。」
やっぱ気障野郎だ、そんなことを言いながら、またいつもの日常に戻っていった。
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