アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
2.叫び
-
「早まるな…っ!」
少年の身体が重力に従いはじめる前に、俺は咄嗟にその腕を掴んで思い切り後ろへと引いた。
ぐらりとこちらに傾いた身体ごと一緒に床に倒れ込んだ瞬間、目の前を急行列車が通り過ぎて行く。
もう少し遅ければ彼の身体は、それ以前に俺が彼の重みに引っ張られていたとしたら2人共…なんて、今更ながら恐ろしくなる。
「…な、んで」
呆然とした表情で列車を見送っていた彼が、ぽつりと言葉を漏らした。
そのままぱっと俺の方に向き直ると、座り込んだままの俺の胸倉を掴んで引き寄せる。
息が苦しくて離して欲しいのに、何故か光を失ったその茶色の瞳から目を逸らす事ができなかった。
「あんたっ…!何で!!俺は…俺、は…っ」
少年の表情が苦しそうに歪む。
その瞳から、堰を切ったように大粒の涙が流れ出した。
「あんたの、せいだ……死なせろよ…殺せ、よ」
「…は」
「何で止めんだよ、死なせてくれ…殺してくれよ…っ!」
滑るように手が離れ、俯いて再び座り込んでしまう少年。
行き場のなくなった両手が、縋るようににぐっと俺の肩を掴む。
死なせてくれ
俺を殺してくれ
絞り出すように吐き出すその言葉は、少年の心の叫びのようにも思えた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
4 / 29