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3.陵
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「…少しは落ち着いた?」
返事は無い。
黙って大人しくソファーに座っている彼に、淹れたばかりのコーヒーを差し出す。
放っておけばいいものを、俺は相当物好きなのか一度関わってしまった責任からか、尚も殺せと物騒な言葉を吐き続ける少年を半ば無理矢理自分のマンションへと連れてきた。
彼は黙ってマグカップを受け取ると、中身をじっと覗き込む。
「あ、俺はブラックで大丈夫だけど、君は?」
「…陵」
「…へ?」
「大沢陵」
どうやら彼の名前らしく、それだけ告げてマグカップに口を付けた。
俺の質問には答えてくれないのか…でもまぁ、ブラックで大丈夫だったようだ。
「…俺は仁科孝史、宜しく」
そういえばお互いの名前すら知らなかったことを思い出して、とりあえず自分も名前を名乗っておく。
陵がどこから来たのかは分からないが、これから一人で帰したとしてまた何をするかも分からない。
それに連れてきて来てから分かったことだが、陵は財布と携帯以外何も持ってきていないらしかった。
「陵、風呂洗うから入っておいで。今日は泊まっていけばいい」
「…は」
ぱっと顔を上げた陵は怪訝そうに眉を顰めた。
まぁ出会ったばかりの男にこんな事言われて信用しろという方がおかしいか。
「取って食いやしないよ。こんな時間じゃ帰るに帰れないだろうし、明日車で家まで送る。それに…流石に他人の家で問題を起こしたりはしないだろ?」
先程迄繰り返していた言葉を思い出し、まさか自殺しやしないだろうと思ってそう付け加えると、チッと不機嫌そうに舌打ちをして分かったよ、と返してきた。
その答えに少しだけ満足して、準備をしに風呂場へと向かう。
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