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4.絶望
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線路へと足を踏み出した筈の俺の身体は、恐ろしく強い力でホームへと引き戻された。
最初は何が起こったのか分からず、俺を轢く筈だった急行列車が目の前を通過していくのを、床に座ったままただ呆然と眺めていた。
「…な、んで」
唯一発する事のできた言葉はそれだけで、呟くと同時にそれは俺の胸の中で行き場の無い怒りと絶望に変わっていく。
振り向きざまに俺の後ろに倒れ込んだ人物の胸倉を掴んで引き寄せる。
そこにいたのは明らかに俺よりひょろくて腕っぷしが弱そうな、困った顔をした会社員風の男だった。
そいつ相手に思い切り怒りをぶちまける。
「あんたっ…!何で!!俺は…俺、は…っ」
そこまで言って耐え切れず、涙が零れた。
見ず知らずの男相手に情けない…でも、一度溢れ出した涙は止まりそうになかった。
「あんたの、せいだ……死なせろよ…殺せ、よ」
…は、と言って男の目が見開かれる。
真っ黒で綺麗な瞳に、顔を涙でぐしゃぐしゃにした情けない俺の姿が映っていた。
そうだ…あんたのせいだ。
あんたが止めなきゃ、俺はこの世から消えられたのに。
「何で止めんだよ、死なせてくれ…殺してくれよ…っ!」
死なせてくれ
俺を殺してくれ
俺が繰り返すその言葉は、誰にも届かずただ闇に紛れて消えて行くだけ。
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