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7.何で
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仁科が貸してくれた服は、俺の身体に合わせて準備してあったらしくぴったりだった。
「…お先、どうも」
「はーい。あ…その傷」
風呂から上がりリビングに戻ると、振り返った仁科が俺の左頬を見ているのが分かった。
ちょっと待っててね、とソファーに座らされ、何だろうと思っていると救急箱を持って戻ってくる。
別に放っておいたっていいのに…マメなのか、それとも心配症なんだろうか。
自分でやると言うのに貼ると言って聞いてくれず、結局されるがままにしておいた。
痛くないように丁寧に貼って、剥がれないようにテープまで留めてくれた。
「ん…どうも」
「どう致しまして」
お礼を言うつもりだったがぶっきらぼうになってしまって、もっとちゃんと言えばよかったと反省する。
こんなに無愛想で何者かも分からない俺を、何で何も訊かずにここにおいてくれてるんだろう。
何でこんなに俺に気を遣うんだ。
他にも色々聞きたい事があったのに、じゃあ俺も風呂入ってくるから、と言ってリビングを出ていってしまった。
残された俺はソファーの背に凭れ、どうしたものかと考える。
別に事情を訊いて欲しい訳じゃない。
寧ろ何も訊いて来ないのは凄く助かっているし、そこまで相手に背負わせる気もない。
ただ、仁科が敢えて何も触れないようにしてくれているのが分かって、逆に申し訳なかった。
どうせなら、命を粗末にするんじゃないと怒鳴ってくれた方が幾らか気持ちは楽だったような気がする。
色々な事を考えているうちに、いつの間にか眠りに落ちてしまっていた。
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