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9.誰
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目が覚めると、ソファーで寝てしまったからか所々身体が痛かった。
思い切り伸びをして目を開けると、テーブルについてコーヒーを飲んでいる仁科と目が合う。
「おはよう」
「…はよ」
「朝ご飯、パンでもいい?」
「…ん」
そもそも俺に選択肢なんて与えて…というかご馳走になっていいのか…
起き上がり、キッチンに向かう仁科の後ろ姿を眺めながらそんなことを思うが、当の本人は最初から一緒に食うつもりだったらしい。
「出来たよ、食べよう」
「…いただきます」
トーストにベーコンエッグ、シーザーサラダ……出てきたのは栄養バランスの整った朝食だった。
久しぶりのまともな朝食にゆっくりと舌鼓をうつ。
プレートの隣には昨日煎れてくれたコーヒーも置いてあった。
コーヒーだけじゃなくて料理も、その…うん、美味かった。
「ねぇ、1つだけ聞いていいかな」
「…何」
「…あのさ…アキって、誰なの?」
思いがけない言葉に、サラダを口に運ぼうとしたフォークを止め、息を呑んだ。
どくんどくんと心臓が煩く音を立てる。
俺は何も話してないはず…なのに何で、こいつがアキの事を知ってるんだ…!?
困惑したまま仁科の顔色を窺うと、真っ直ぐ真剣に俺の目を捉えてきて思わず逸らしてしまう。
どう答えようかと迷っていると、小さな溜息と、ごめんね、と申し訳なさそうな声がした。
「話すの嫌ならいいんだ、昨日の夜も今日の朝も、寝言で言ってたから気になっただけで…」
「………アキは…」
言葉を切った俺を、仁科が黙って見守っているのが分かる。
続けたいのに声が詰まってうまく言葉になってくれない。
やっぱり答えないと…そしてもう俺みたいな奴に関わるなって言わないと…
心臓がぎゅうっと握り潰されるように痛む。
途切れ途切れに、無理矢理掠れた声を絞り出した。
「アキは……俺が、殺した……俺の恋人だ…っ」
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