アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
10.後悔
-
…聞かない方が良かったのかもしれない。
陵の言葉に、俺はすぐにそう後悔した。
それは別に彼の抱える事情の一部分を知ってしまったことに対してじゃない。
「アキは……俺が、殺した……俺の恋人だ…っ」
「それ…っ、て」
「…もう…いいだろ、俺に関わるとろくな事が無い…やめとけよ」
吐き出すようにそう言った声は酷く掠れていて、表情は苦しそうに歪んでいた。
俺に話そうという気を持ってくれて、昨日は応答しかしなかった彼が自分の言葉で話をしてくれたのは凄く嬉しかった。
でもそんな表情をさせてしまったこと…俺の一言でまた彼を追い詰めてしまったこと。
それだけが無性に俺の胸を締め付けて仕方が無かった。
「……君が…その子の命を、直接奪った訳じゃ無いんでしょ」
「…どうしてそう思う?」
ちらりとこちらに向けた瞳は、また光を失い少しだけ揺れていた。
どうしてそう思うか、なんてよく分からないけど…それでも。
「俺には、君が人を殺める人間には見えないよ」
「…別に、あんたにどう見えてるかなんて…知らねぇ」
そのまま黙り込んでしまう陵に、何も掛ける言葉が見つからなかった。
…いや、正直いうと言いたいことは沢山あった。
君が殺めたというなら……何でそんなに、苦しみに押し潰された表情をしてるの。
アキって子が本当に好きだった、って君ははっきりその態度で伝えているのに。
俺には恋人を亡くして護れなかったと嘆く、只の少年のようにしか見えないんだ。
もしそれで昨日投身をしようとしていたのだとしたら…そんな君を見てその子はどう思ったと思う。
でもどんな言葉も彼を追い詰めて傷付けてしまうような気がして、何も言えなかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
12 / 29