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11.光
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それからそのままお互い無言のまま朝食を終えた。
ごちそうさま、とキッチンに皿を持って行った陵は、テーブルに戻ってきてまた何か考え込んでいる。
その瞳はまだ光を戻さない…きっと彼の恋人のことを考えているのだろう。
こうなってしまったのも俺の所為。
もう、アキという人物について俺から訊くのは止めようと思った。
「いつでも送っていくから、準備出来たら言って」
それだけ声を掛けて、皿を洗いにキッチンへと向かう。
本当はこのまま送ってしまった方がいいのかもしれないが、その後何をするのかが怖くて言い出せなかった。
「…何であんたは、俺を助けようとしたんだよ」
食器を洗い終えて新聞を読んでいると、ぼそりと彼がそう呟くのが聞こえた。
新聞から顔を上げると真っ直ぐな視線が俺を射るように見ていて少し考える。
「…何でだろうね。気付いたら助けてた…それだけ」
答えられたのはたった一言。
今考えれば、理由なんてそれだけしかなかった。
「っ…あんたも死んでたかもしれないだろ!?」
「あぁ…うん、床に倒れ込んだ時にそう思った。でも君を助ける瞬間は、全くそんなこと考えてなかったよ」
彼は呆れたように口を開けたまま、顔がみるみるうちに真っ赤に染まって俯いてしまう。
しかしそんな呆れた顔されても本当に俺はそれだけの理由で助けたし、自分の命の危険なんて全く考えていなかった。
「だから…俺が助けた命、もう無駄にして欲しくない」
そう本心を伝えると、分かったよ、と頷く陵。
俺は彼がまた自分を傷付けてしまうことを恐れていたのだろう。
でも…これなら今別れてしまったとしても大丈夫だろうか。
彼の表情を見てそんなことを思う。
俺との言葉に頷いた後の彼の瞳には、次第に光が戻り始めていた。
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