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13.回想
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お前が身代わりになってどうする。
そう問いかける自分の声は、今までになく情けなく震えていた。
俺の腕の中で血濡れの少年は微笑み、血の気の無くなった青白い唇で最期の言葉を紡ぐ。
「ごめん…そんなの、頭になくて……陵が無事なら、良かった…」
そう言って幸せそうに微笑み、唇が声無く「ありがとう」と動いた。
ただ次第に冷たくなっていく身体を抱き締めていることしかできず、溢れた涙が眠るように穏やかな表情を浮かべたアキの頬を幾筋も伝っていった。
その後のことは、正直なところあまり覚えていない。
ただ、お前と知り合っていなければ死なずに済んだと、アキの葬式で父親に殴られたことははっきりと覚えている。
お前の所為だ、お前が昭人(アキヒト)を殺したのだと何度も罵られ、最後の顔を見ることも、手を合わせることさえ、許してもらえなかった。
それなら、と手当てをしてくれようとするアキの母親や親族の手を振り切ってアキの家を後にした。
家に帰ると頬の痣に驚いたお袋が無理矢理座らせて湿布を貼ってくれた。
お袋は俺が荒れて金髪に染めてからも何かと気をかけてくれて、喧嘩をして帰るといつも手当てをしてくれる。
頬にひやりとした湿布の感触を感じながら罵られた言葉を反芻し、胸が締め付けられるような痛みに襲われる。
アキは、
俺の所為で、
死んだ。
それだけが頭の中をぐるぐると回って何も考えられなくなり、自室に引きこもって外に出ることもなく数日を過ごした。
そしてある夜行き着いた答えに、俺は財布と携帯だけを持って家を飛び出した。
もうアキのいないこんな世界、生きたって意味はない。
こんな身体すぐにでも捨てて……アキの所に行こう。
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