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17.到着
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程なくして、車は陵の自宅の最寄り駅へと到着した。
駅は住宅地の真ん中に建っており、そこから道案内をしてもらいながら細い路地を進んでいく。
ここ右、次真っ直ぐ…そう言って誘導する陵の声は少しだけ急いているようにも聞こえる。
「次…突き当たり左で3軒目」
言われた通りに3軒目の家の前に止まると、クリーム色の壁の小さなアパートが建っていた。
きっとここが陵の家なのだろう、彼はそのアパートをじっと見つめたままで動かない。
暫くして、ふぅ、と小さく息をつくと俺の方を振り返った。
「帰る」
「うん、もう飛び出しなんてしないでね?」
扉に手を掛けた陵の瞳が困ったように揺れるが、分かってるよ、とぶっきらぼうに返された。
昨日と比べて少しだけ気持ちが楽になったのだろうか、それとも俺に助けられたせいか…いや後者は自惚れかもしれない、どちらにしても肯定の意思が直ぐにはっきりと示されたことに安堵する。
「……あ」
「うん?」
「…連絡先」
急がなければ出発してしまうと思ったのか、慌ててポケットからスマホを取り出して何か操作を始めた。
俺もプライベート用の自分のスマホを開くと、最近全く使うことの無かった赤外線送受信の機能を探す。
助手席の窓越しに近づけると、通信完了しましたの文字が表示された。
「じゃあ、また…でいいのかな?」
「あぁ…また」
それ以上はお互い何も言葉を交わすことなく、俺は窓を閉めて車を発進させる。
家からすぐの曲がり角を曲がる瞬間にバックミラーに目をやると、少しの間見送るように此方を見ていた陵がアパートに向かって歩き出すのが見えた。
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