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18.1人
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復路は話し相手がいなかったからか、往路よりも少しだけ時間が長く感じられた。
何気なくつけたラジオから落ち着いたジャズのメロディーが流れてくるのを聴き、少し気分が穏やかになっていく。
家に帰りついたのは正午を少し過ぎた頃だった。
玄関に車のキーを置き片付けをしようと家の中を見渡すと、食器カゴには2人分のプレートとコーヒーカップが置かれ、脱衣所にはスウェットが綺麗に畳んで重ねてある。
自殺未遂、という俺にとっては非日常な出来事からあっという間に過ぎた一晩だった。
しかし陵が家に居た痕跡は所々に残っていて、本当にあったことだったのだと実感した。
洗濯機のスイッチを入れメールのチェックをし、部屋の掃除機をかけ終えた頃には13時半を回っていたが、あまり昼食を作る気にもなれない。
偶には出前をとってみることにして、ラーメンを啜りながらニュースを眺める。
一晩の間に情でも移ってしまったのだろうか。
1人での食事は慣れていた筈なのに、人の温もりを知ってしまうと少しばかり寂しい気もした。
今頃彼は心配して帰りを待っていた母親に怒られているだろうか。
それとも、一緒に昼食をとっているのだろうか。
小さくもきちんと生活感があり片付いたクリーム色のアパートが頭に浮かび、思わずふっと頬が緩む。
そんな事想像したってどうしようもないのに…俺はどうかしてしまったみたいだ。
今気にしても仕方がない。
彼の様子からして、きっとまた近いうちに連絡を取り、会うことになるだろう。
それなら今はゆっくりと、珈琲を飲みながら昨日見れなかった録画のロードショーでも見ようか、と思いを巡らせた。
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