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25.裏庭
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学校の裏庭は、理系科目の実験棟を挟んで学級の並ぶ校舎の反対側にある。
今は誰も実験棟を使っていないのか、誰にも会うことなく辿り着く事ができた。
ここは南向きに拓けているため陽当たりが良く、程よく木が影を作っているため過ごしやすい。
俺もよくアキや智宏と一緒に昼飯を食べたり、昼寝をしたりするのに使っていた。
裏庭に着くと、大きな木の幹に寄りかかるようにして木陰に腰を下ろす。
ここは3人でよくいた場所…葉の間から差し込む光が、丁度良い明るさと温度で差し込む、居心地の良い所だ。
そういえば、仁科からメールが届いたまま返信をしていなかった。
ポケットに入れていたスマホを取り出しメールボックスを開くと、『そっか、良かった』と一言書かれたメールにどう返そうか迷う。
『良かったって、何が』
そう文章を打って送ろうとして…やめた。
『無理矢理来たってつまらない』
『あんた、親みたいな事言うんだな』
やっぱり俺には仁科の言葉の意図が分からなくて、どう返したとしても突っぱねてしまうような気がした。
書いては消し、また考えて書いては消しを繰り返す。
結局そのまま未送信ボックスにメールを保存したまま、ポケットにスマホを突っ込んだ。
アキのことにしても、仁科のことにしても、起きていると余計なことばかり考えてしまって、折角学校に出てきたのに穏やかに過ごすことはできなさそうだ。
頭の後ろで手を組み、じっと木の葉の間から見える青空を見つめていると、ここ数日の寝不足が祟ってかすぐに瞼は重くなってくる。
悩んで悶々とするくらいならいっそ何も考えずに眠ってしまおうと、眠気に抗わずに目を閉じた。
風が吹き、髪が靡く。
記憶の中のアキが、俺の頭を撫でながら優しく笑う。
幸せなのに苦しくて…涙が一筋、頬を伝っていくのを感じた。
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