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俺の言葉を信じて
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「最っ悪!」
昨日の件で今日の提出物を全て部屋に忘れて来た。
職員室で各教科の先生を回り、今日中に持って来いとの返事と、部活の顧問に相談に行き怒られて、
放課後しばらく経ってからやっと寮へ向かう事が出来た。
少なくとも全力疾走しないと顧問に怒られる。
軽く柔軟してから校門に向かうと久我がいた。
「久我!」
声をかけると、ビクッとして振り返った。
それから、ちょっと照れたような顔で笑って俺に手を振った。
すごく嬉しそうな、それでいて切ないような笑顔に見惚れた。
その久我の背後、校門に一台の赤い車が止まる。
俺の親父と同じ車種だ。
ハイブリッド車だから、ほとんどエンジン音が聞こえない。
中から二人のチンピラっぽいのが降りて来て、
「え、あ、ちょ、ええ、あああ!」
俺の目の前で、俺に気を取られてる久我の頭を工具らしきモノで殴りつけ、久我を車に乗せて走り去ってしまった。
「えええ、嘘、え、ええー!」
慌てて道路に出て追いかけようと思ったが、車は凄いスピードで走り去って行く。
「あああ、えー、あー、ちょ、あー」
追いかけようか、職員室行こうか、いや警察か。
あーとかうーとか言いながら校門前を熊のように彷徨いてると、知っている人が来た。
「アレ?お前、姫の友達じゃん、どうした?」
アドンかサムソンか見分けは付かないが、俺は駆け寄って先輩の腕を掴んだ。
「く、久我が、車で、えっと、殴られて、今」
「車?轢かれたのか?」
「違、あの、連れてかれて、あ、あっちに」
「うお?あっちか?」
「おう、どうした?」
もう片割れがやって来た。
「アニキ、姫が拉致られたらしいぞ」
「何、どっち行った?」
何処からか自転車を持ち出してくる。
「待って、俺車見た!赤で車番も見た!」
手短かに説明をすると、兄の方は自転車で追いかけ、弟の方は職員室へ走って行った。
誰も居なくなってから、膝がガクガクと震え出した。
あの時声をかけなかったら、こんな事にならなかったかもしれない。
俺は何も出来なかった。
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