アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
タチとネコ
-
隣に座って、腰抱き寄せられて、優しくて甘いキスをされる。
抵抗できない。したくない。
なんか、すごく気持ちいい……。
「…気持ちいい?」
「……よくない」
そんなふうに聞かれたら、否定する。
だけど多分、俺の顔は気持ちいいって言っていて、拓斗はふふっと優しく笑ってもう一度キスをしてきた。
蕩けてしまいそうなほどに甘いキスが気持ちよくて、さっきまでタチだとかネコだとか考えていたのが嘘のように忘れてしまっている。
だけど、唇が離れて目を開ければそこは現実で、俺はネコにはなれなくて。
「…ごめん……」
なぜか溢れた涙が頬を伝って、服にしみが広がっていく。
拓斗は驚いた顔をしていたけど、驚いているのは俺も同じ。
なんで泣いてんだろ。俺、そんなに拓斗が好きなのかな。そんなにネコになるのが無理なのかな。
無理、無理だけど…でも、なんで、泣いてんだろ……。
「薫…。薬飲んだらまた寝てていいから」
拓斗の声は優しいのに、悲しみを含んでいるように聞こえる。
俺が気持ちに応えられたら、素直になれたらいいだけなのに。
タチとかネコとか後回しでいいから、好きだって言えたらいいのに。
それすらも言えない自分に嫌気がさす。
自分から好きな人に向かって好きだと言うことが、こんなにも恥ずかしくて、こんなにも勇気が必要で、こんなにも難しいことだなんて、思わなかったんだ。
寝転がったベッドの上、天井を見つめながら思い浮かべるのは拓斗のこと。
食器を洗いにいった拓斗は今頃何を考えているんだろう。
「…好き……」
口に出してみたら、恥ずかしくなって、急激に頬が熱を持つ。
でも…、そうだ、こうやって、拓斗のいないところで好きという言葉を口に出してみたら、恥ずかしさがなくなっていくかもしれない。
好きだと言う練習をしたら、俺もいつか拓斗の気持ちにちゃんと応えてあげられる日がくるかもしれない。
タチとかネコとか置いといて、今はそれだけ考えよう。
そういうの考えてたら、このままずっと先には進めない…。
セックスとか、体をつなげるっていうのも、大事だとは思うし、拓斗とそうなりたいとも…思う……。
だけど、まずは気持ちを伝えなきゃ。じゃないと、そのうち俺のこと、諦めてしまうかもしれないから……。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
25 / 80