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涙(薫)
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拓斗が帰ってこない。
朝目が覚めると、部屋の中はしんと静まり返っていて、自分以外に人の気配はなかった。
土曜日の朝、学校はない。
拓斗はあのまま帰ってこなかったのかな…。
やっぱり怒ってるのかな。もう俺のこと嫌いになったかな。
でも、山木が話してくれるって言ってたし…。
俺が、熱があるからって、間違えてキスしちゃうようなバカだから…飽きられたのかな……。
「……っ、拓斗……」
名前を呼んでも拓斗には届かなくて、むなしく部屋に消えるだけ。
好きって言えばいいだけだったのに、こんな熱のせいで、何もかもがダメになった。
回らない思考が、朦朧とする頭が、全部全部ダメにした。
拓斗も山木も何も悪くないのに、俺が全部ダメにしたんだ。
自分のせいで、お互い好きなのに、俺が、壊しちゃった……。
溢れる涙が頬を濡らすけど、拭うこともできない。
「っ、嫌だ…!嫌だ、拓斗……!」
お願いだから、帰ってきて。
俺の前に来て、また俺を好きだと言って。
俺のこと、抱きしめて……。
「拓斗が、いい……。拓斗じゃなきゃ、嫌だ……」
セクハラされても、襲われかけても、それでも俺は拓斗が好きなんだ。
ネコ…になるのは、嫌だけど…それでも、それでも拓斗がいい。
高校では…ちょっと、遊んでた…けど、もう、そんなのしないから、だからまた俺のこと好きだって、言ってよ……。
「拓斗…好き……」
拓斗に会って、拓斗だってわかって、すぐに気付いたんだ。
何年経っても、やっぱり拓斗が好きなんだって。
「薫……?」
「っ!!」
しんと静まり返って、聞こえるのは自分の声と、すすり泣く音だけだと思っていたのに、背後から、拓斗の声が聞こえた。
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