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佐倉と横井
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入学してから数週間が過ぎて、ようやく専属の犬を持てることになった。
とは言っても、一人一頭ではなく、ペアを組んでペアで一頭受け持つことになる。
山木は三浦と組むと決めたらしく、既に先生のところへプリントをもらいに行っていた。
俺は当然拓斗と組むつもりで振り返ったが、拓斗に声をかける前に、後ろから腕をぐいと引っ張られてしまった。
「ねえ城田くん!」
俺の腕を引っ張ったのは、同じクラスの佐倉沙耶って女。
ショートヘアで化粧が濃くて、俺はあんまり化粧が濃い女って好きじゃないから、全然関わったことないやつ。
「私と組まない?」
拓斗の方を向こうとするとまた腕を引っ張られて、遮られた。
なんで関わったこともないやつと組まなきゃいけないんだよって思いつつ、俺は佐倉の行動がヘンなことに気が付いた。
なんていうか、一生懸命俺を拓斗から遠ざけようとしてるって感じだ。
俺らの関係って、同じ寮の仲良いやつらしか知らないと思うんだけど、なんなんだろう。
「いや、俺……」
「ねぇ保坂くん、私と組まない?」
断ろうとした時、甘ったるく囁く女の声が後ろから聞こえてきた。
俺を呼ぶ佐倉の声も無視して拓斗の方を向くと、佐倉とよく一緒にいるっぽい横井あさみが拓斗と距離を詰めている。
横井は背が小さくて、色白にツインテールの童顔。一般的に見ればいわゆる可愛い女の子って感じのやつだけど、超ぶりっこって感じがして、俺は好きじゃない。
拓斗は興味無さそうにしていたけど、ふいに横井の手が伸びて、拓斗に触れようとした。
「あっ!城田くん!」
佐倉が叫んだけど、俺は見向きもせず横井と拓斗の間に割って入った。
「悪いな、拓斗と組むの俺だから!」
「えっ…」
横井も佐倉も驚いて目を見開いていたけど、すぐに拓斗の腕を引いて、プリントをもらいに先生のところへ行った。
「…なに、積極的じゃん」
「っ、う、うるさいな!拓斗だって俺以外と組む気ないだろっ」
「まーね。でも、薫からこんなふうに奪いにくるなんて、嬉しい」
「…奪ってねーよ……俺のだし」
最後の方はぼそっと呟くと、聞こえないように言ったつもりだったのに聞こえていたらしく、微笑まれてしまった。
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