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たまごの宿泊
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ある日の朝早く、俺と拓斗は学校のエントランスにいた。
「それじゃあ、たまごをよろしくね」
「はい、任せてください。気を付けて行ってらっしゃい」
飼い主の美佐さんからたまごのリードを預かり、見送る。
明日から美佐さんは家族旅行に行くらしく、たまごを数日間学校で預かることになった。
他にも預かっている犬が何頭かいるし、普段から顔を合わせている犬たちだから、たまごが寂しいことはないと思うけど、やはり飼い主が一番なのか、少し寂しそうな顔をしているように見える。
「たまご、部屋に行こうか」
拓斗がたまごをケージに入れて、校舎へ入っていく。
俺もそれについて、たまごを泊める部屋へ入って行った。
「あ!保坂くん!」
ドアを開けた瞬間、目の前にいたのは横井と佐倉。
2人の担当のビーグル、ネネも一昨日くらいから学校で預かっているから、ここで鉢合わせても仕方ないけど、それにしても最悪だ。
「あれ、その子もお泊りなの?」
「ああ、旅行に行くからお留守番だって」
すました顔で、横井の方を見もせずに返す拓斗がちょっと嬉しい。
「薫、こっち持ってて」
「おう」
俺に声をかける時は、俺の方を向いてくれるんだから、ちょっとした優越感に浸れる。
たまごに対しても、優しく撫でて毛並を整えてあげていて、横井がどんなに話しかけても一言二言しか返さず、全然見ようとしなかった。
「じゃあまた後でな。夜見回りに来るから」
たまごのケージの鍵を閉めてチェックをして、自分の名前を書くと、他の犬たちを見ていた拓斗の方を向いた。
「薫、終わったか?」
「うん。帰ろ、俺お腹空いた」
「今日の晩飯、山木が作ってくれるって言ってたぞ。なんかみんなでわいわいやりたいらしい」
「まじで!やった、楽しみ!」
笑ながら、後ろを振り返らずに部屋を出た俺たちは、横井と佐倉がどんな顔をして俺たちを見ていたか知らなかった。
俺たちが出て行った後の部屋で、何を言っていたのかも。
「…なによ、たまごなんて、ヘンな名前のくせに。ムカつく、こいつも城田も!」
「あさみ…。だ、大丈夫だよ、あさみ可愛いもん!ちょっと2人っきりになっちゃえば、保坂くんなんてイチコロだって!」
「…ねえ沙那。私、いいこと考えた」
「え……?」
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