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忘れやはする =SIDE H=
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体液にまみれ気を失って床に倒れこんだ彼の体を眺め、洗濯機の近くの棚からタオルを手にしてぬるま湯で濡らしてもってくる。
オレの言葉に傷つきながらも、あの頃のような目を向けてくる彼を、オレは試してしまっていた。
相変わらず綺麗に艶やかな髪も、あの頃より筋肉質な体も本当に綺麗だった。
そっと体液を拭って、体中を清める。
怖くて抱くことさえできなかった。ただ、彼を辱めるだけでオレは体をつなげることができなかった。
すっかり臆病になっちまってる。
信じることが、できなくなってしまった。
多分、成春がオレのことを思って、オレの前から消えることを選択したのはわかった。
忘れようと頑張っても、どんなに頑張ってもできなかった。
「………」
ぎゅうっと意識のないその体を抱きしめる。
愛している。今も変わらない。
それなのに、それを口にすることがどうしてもできない。
10年間誰のものでもなかったという、その言葉には嘘はないだろう。
まるで処女のように、初めて抱いた時よりずっと堅く拒んだアナルがその証拠だろう。
重たい成春の体をなんとか抱き上げて、寝室へと運ぶ。
オレが、留学していた間も待っていてくれたといっていた。多分嘘はないだろう。
高校の時も、会わないように避けていた時でさえ、オレのことをずっとつけていたと聞いたこともあった。
気質的に、そういうストーカーチックなノリもあるのは知っている。
少し大きめのベッドに成春を横たえると、ベッドの上に置いてあるものにオレは目を奪われた。
なくしたと思っていた、あの時かけていた伊達眼鏡がそこにあった。
大切そうに、ケースに入れてほこりも被らないようにして置いてある。
……本当に……バカな人だ……。
10年も経ったら、オレの心なんて変わってるかもしれないのに、ずっと持ち続けて待ってるなんて。
許して欲しいのだと、心から訴えている表情に……オレのキモチもほどけかけている。
だけど……。
あの時のように、急に消えたらなんて思うと怖くて仕方が無い。
スキだと口に出すことが……。
本当に怖い。
あの時の気持ちを忘れることなんて、できやしねえのに……。
「………せいは……」
呼ばれて焦って振り返ると、成春は寝言を言ったらしくもにゃもにゃと口を動かしている。
愛らしいしぐさに思わず唇をその唇へと落とす。
何の夢を見ているのか、柔らかい笑みを刻んですやすやと眠っている。
「バカは……オレの方か……」
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