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ときはなる人=SIDE H=
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目の前で涙を零す彼を、オレは見ていることができなかった。
冷たい言葉で突き放すようにわざとしていたのは、オレ自身だったのに、この人の涙は見たくなかったのだ。
あの頃とまったく変わらず、純粋すぎる言葉をオレに差し出す人。
筋を通さないとと勝手に決めて、オレと距離を置いて俺を見つめ続けるとか、本当に少女マンガかなにかのような恋愛をぶつけてくる。
しかも、オレの相手に悪いからと、泣いて身をひこうとしてくる。
好きじゃないと前置きしたにもかかわらずだ。
どこまで純情な人なんだろう。
「………恋人がいるなら……諦めるしかないだろう」
「何故、それでも奪おうとか考えてくれないんですか」
「俺にそんな資格ない」
震える拳を握って俯いている背中を抱きしめたくなる。
でも、それじゃ何度も繰り返すだけだ。
何度でも、彼はオレから逃げるだろう。
「資格なんか、必要ないんですよ。欲しければ奪えばいいんです」
「……俺は……オマエが好きなんだよ」
変わらない眼差しを向けてくる人。
もう一度その手に入れられるなら、絶対に今度は離す事はできない。
「信用できない……。先輩の体を作り変えて、オレから離れられないようにしてしまったら、また好きになれるかもしれないけど……もし、オレが貴方から離れたら…貴方が追って追いすがるくらいに……」
絶対オレから離れられないように。
そこまでしないと信用することが、もうできない。
「いいよ……。そんなことで、オマエが俺をもう一度好きになってくれるなら。オマエの好きに作り変えていい」
本当に少しもぶれずに変わらない人は、そう言ってオレの目をじっと見つめる。
「バカな人だ。オレはアンタを調教するって言ってるんですよ?分かってます?」
思わずいらついて手を伸ばして先輩の肩を掴む。
真っ直ぐな目許が、僅かに赤く染まりオレを見返してくる。
「俺はずっとオマエのもんだ。好きにしてくれ」
変わらない、ずっと変わらない気持ちのままの彼の表情に、オレの心はまたゆっくりと動き始めた。
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