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ときはなる人2=SIDE H=
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この人はまったくあの頃からキモチも心も変わっていない。
成長すらしていない。
あの時も資格がないとか、そんなやりとりをしていたのを思い出す。
いつまで経っても全く変わらない不器用な人だ。
自分を捧げて許されるのならそれでいいと考えている。
あまりに単純で、考えていることなど手に取るようにわかるのに、どうして信用してあげることができないのだろう。
われながら、気持ちの狭さに笑いたくなる。
取り戻そうと、四国までいこうとあがいた。
結局はいろんなトラブルでたどり着けず、諦めるしかないとオレもそこで迎えにいかなかった。
迎えにいったら、何か変わったのだろうか。
……もしとか、たとえばとか、こうしていたらとかそんな考えは愚鈍のきわみだということは分かっている。
それでも、今でも考えてしまう。
「貴方の気持ちはわかりました。……冷たいことしか言えなくてごめんなさい。それでも僕は、前のように貴方を好きになるかわからないですよ」
必死な表情を見つめて、昔から変わらない綺麗な髪にそっと触れる。
艶をもった綺麗な髪。あの時とは違う色をしているけれど。
たった二回だけ、抱いた綺麗な肢体。
忘れることなどできないし、誰を抱いても思い出された。
「そんなこと…分かってンよ。また……出会えたなら…もう、離れないって決めてた」
必死で訴える真っ直ぐな目も、何もかも変わっていない。
「それでも、もし、離れたくなったとしても、今度は何も言わずに消えるのだけはやめてください。」
あの絶望感は今でも忘れられない。
退院して、学校にいったところ転校を知り、実家にいくと引っ越した後だといわれた。
頼み込んで成春の母親から住所を聞き出して、迎えにいこうと思った。
「離れないよ」
「……簡単に言わないでください。後が……怖い」
オレはすっかり臆病になっている。
何もかもなくした、あの日に戻りたくないと……。
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