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ながからむ心もしらず2=SIDE H=
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ことの顛末を全て吐き出し、気を落ち着けようと、暖かな薫りの良い珈琲を口にして飲み込む。
「確かにな、一度負った傷は二度と負いたくないからな」
「康史さんは、アニキに逃げられたらどうしました?」
逆に問い返すと、彼はそうだなっと呟いて天井を再度見上げて考える。
この人は考える時に、いつも天上を見上げる癖があるようだ。
「追いかけるしかないなー。でも、トールのことだから、何も言わずに消えることはしねえかな。アイツは隠し事できねえからな」
シュミレーションしたのか、ちょっと気分を盛り下げた表情を浮かべて答える様子に本気でオレの話を聞いてくれているのだと感じた。
アニキは何はともあれ、この人と一緒にいて幸せそうだ。
「まあ。康史さんは、アニキの身体の方も支配してるから、逃げられるなんてことないでしょ」
なんだかんだ、絶対にアニキを離さないように裏で画策するタイプで、単純明快な絵に描いたような脳キンである、簡単に罠にかかるのだろう。
康史さんは、肩を聳やかして、軽く眉をあげて首を軽く横に振った。
「トールに関しては、俺は自信なんかいつだってねーよ。支配なんかできりゃいいのにっていつでも思ってんだけどね。あいつはいつだって王様だからな」
ふっと気弱そうな口調で語る様子が意外な思いでじっと見入ってしまう。
「俺がトールを抱けるのも、あいつの精神力の賜物だし、唯一の頼みの綱は俺の顔くらいいだけどな。今後どうなってくかなんて神のみぞ知るだけどな」
頬を掻いてちっと言いにくそうに語る様子が、今まで思ってきた自信たっぷりのイケメン王子のイメージからかけ離れて思えた。
誰だって先のことは分からない。
続いて行く関係なのか、途切れてしまう絆なのかなんてわかりはしない。
努力だけではどうにもならないこともある。
だけど、これだけは言って置かないといけない。
「アニキがさ、長距離の仕事やめたのも康史さんの為だと思うし、中途半端じゃ、籍なんか入れないと思います。」
「ありがとな。大丈夫、信用してねえわけじゃないよ。でも、なんか、西覇に康史さんとか改まっって言われるとくすぐったいな」
「ガキの時みたいに、ヤッちゃんなんて呼べないですよ」
珈琲をすすりながら、頭の回転が速くて美形で何も手に入れられないものもないような男が、脳キンでむさ苦しい男1人のことで、入籍までしているのに、先のことがわからないというのなら、俺が先がわからないのは普通のことなんだなとおもう。
一度いなくなられた記憶もあるのだから。余計にだ。
がチャッと乱暴に居間の扉が開き、上半身裸で大あくびをかましながら、寝癖のついた甘栗色の髪をしたオレの実のアニキが入ってくる。
「んあ、はよ。セイハ、来てたンか。」
「……おはようにはマダマダはえーよ」
少し気だるそうな表情を浮かべながら、どすっとオレの隣に腰を下ろす。
「ヤスが隣にいねえから、何事かと思った」
オレの前から当然のように残っていた珈琲を飲み干して、アニキはオレの肩を叩いた。
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