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君がためおしからざりし…1=SIDE S=
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遅い時間だからと帰っていった背中を、俺は引き止めることもできずにただ見送ることしかできなかった。
俺が彼にしたことを考えれば、すぐに許されるなんて想ってはいない。
ベッドに転がるも、体は疲労しているはずなのにすぐに眠りは訪れ無そうだ。
さっきまでこの部屋に、彼がいたのだ。
それが、夢のようで、まだ現実のような気がしない。
自分から覚悟を決めて彼から離れる道を選んだというのに、結局諦めることなんて露ほどもできずに、再会を祈っていた。
あの時した選択を後悔はしていない。
だけど、あんなふうに彼を傷つけたことは、自分で自分が許せない。
「……あんな風になっちまうなら……」
たとえ、自分の決心が揺らぐことになっても、ちゃんと真実のキモチをうちあけるべきだった。
もう、好きになってもらえないにしても。
それでも、大事に思ってきたのは変わらないのだ。
体を落として手に入れるといわれたときも、ただ単純に嬉しいと思った。
もし、この体を明け渡すことで彼をもう一度手に入れることができるなら。
それならば、何もおしくなんかない。
むしろ、そうされていいと思っている。
分かってないなんて言われたけど、分かった上の言葉だった。
高校の時もずっと話さない期間があっても、ずっと眺めていた。
ずっと眺めているだけで満足していた。
明日も会いにいこう。
たとえ、どんな風に拒絶されても。
人を好きになるキモチをなくしたのだといっていたけど、もしかしたら、それは俺以外を好きになれないってことなのかもしれない。
それは楽観的すぎる考えかもしれないけど。
だけど、そんな考えにでも縋ってしまいたくなる。
ベッドの上に飾っておいた眼鏡を手にとって眺める。
これだけが、つながりだった。
もう、会いにくるなとも言わなかったし、もう会わないとも、これっきりだとも言わなかった。
「諦めなくて……いいよな」
手に入れるためなら、何も怖くなんかない。
きっと、あのときにその決断をしているべきだったのに。
遅くなってしまったけど、遅すぎることはない。
「今度こそ、きっちりケジメつけンよ……西覇」
眼鏡のグラスに唇を押し当てて、そっと大切に掌で包み込む。
何も怖くない。
オマエを失うこと以外なら、もともと何も怖くなかったはずなんだ。
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