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君がためおしからざりし…2=SIDE H=
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いつも通り教授の講義資料をまとめた後、簡単に研究室にある検体を確認してから、学生たちにまぎれて校門を出るとぐいと強く腕を引かれた。
「待ってたぜ」
振り返ると、爽やかすぎる笑顔を浮かべた成春が立っている。昨日の今日で、本当に懲りない人だ。
オレが何をしたかなんて、まるっきりなかったことにしたのだろうか。
「先輩、なんですか」
不審な表情をして、オレが成春を見上げると、こたえていない様子で、俺に微笑みかける。
「迎えにきたんだ」
ちらりと路肩に置いてある車をみやり乗れというように視線を向ける。
「僕がそんなに暇そうに見えますか」
実際にやるべきことは終わらせてはきたので、時間がないわけではなかったが、素直にはなれない。
「飯くらい、一緒にできないか、セイハ?奢るし」
めげない姿勢は、昔の成春を思い出す。
学生たちの視線が気になり、オレは面倒そうに助手席に乗り込んだ。
横に座る成春を確認すると、シートベルトを着用する。
「僕が、貴方に何をしたか忘れたんですか」
「まさか、俺はそんなに忘れっぽくはねぇぜ。言っただろ?オマエに許されるなら、身体なんかいくらでも好きにしていい」
はっきりと断言して車を走らせる。投げやりにさえ聞こえる言葉なのに、決意には期待すら感じられる。
馬鹿だなと、思う。
「夕食だけで良いのですか?」
期待しているのは、オレも一緒かもしれない。
流れいく景色を視線で追いかけて、顔をわざわざ逸らす。
期待はオレもしている。だけど、悟られたくはない。
「え……、セイハ泊まっていってくれんのか?」
て、飛躍しすぎだろ!?
思わず顔を凝視すると、成春は真顔である。
「…………遅くなったら、泊まらせてもらいますよ」
なんで、こんな言い方しかできねーかな、オレは。あの頃みたく言ってみたいのにできない。
悔しいのか、なんなのか感情がわからなくなっている。
複雑すぎて、考えることも拒否してしましまいたくなる。
「やった、じゃあ、イッパイ飯作るかな」
嬉しそうに、屈託なく笑う成春に、オレは自分がひどく小さく感じてたまらなくなる。
どうして、こたえて、やれないのだろうかと。
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