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あやめもしらぬこいもするかな =SIDE H=
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成春さんの家の冷蔵庫の中は、食材がきちんと小分けに使いやすくタッパーに入れてわけられている。根が真面目だからか、こういうところもキッチリしているなと思う。
ソファで手持ち無沙汰にオレを眺めている姿は、やっぱり不安そうで、昔と変わっていないように見える。
進学校で、唯一髪の色を金髪にしてきて、慣れない様子で制服を着崩していた。更生させてほしいと、そんな目をしていたように思う。
野菜炒めを作り、タッパーに入っていた魚でムニエルをつくる。
先のことなんか、知らないし、分からなくてもいい。
アニキに言われたように、オレはずっと彼を好きだった。忘れられなかった。それが事実だ。
「そういえば、成春さんは、会社の開発部門なんでしたよね」
「あ、ああ。だから、西覇の学校にもよく世話になってるんだ」
ちょっと目を上げて、話しかけられたのに嬉しそうな表情をする彼は犬みたいで可愛い。
「営業じゃないなら必要はないかもしれないですけど、そこの大きい病院の副院長は知り合いですよ。昔、副院長の家庭教師をしました」
そういや、オレにも彼に役に立ちそうなコネがあったことを思い出した。
「副院長の?!さすがだな、西覇の教え方はすげーわかりやすかったからな」
思い出したような表情で、成春はふうーと息を吐く。
「俺に家庭教師してくれた時、すごい真剣で、すごく俺の考えの先を見てくれて、本当にすげーなって思ってさ、そんで惚れたんだよな」
うっとりした表情で、そんなことを語られると、オレもこらえきれなくなりそうだ。
無防備すぎて、この人がたまに恐くなる。
話をどうにか、変えないと。
「だから、あの病院に営業かけるなら紹介できますよ」
彼はちょっと眉を寄せて考えこむ。
「ありがとうな。西覇が、そんなことまで考えてくれるとか、嬉しすぎるけど、あまり無理はしないでな。人付き合い、あまり好きじゃないだろ」
心配そうな顔をする彼は、本当に小悪魔だなと思う。
料理は食べて欲しいから、ここでがばりと押し倒せないのが煩わしい。
ようやくコンソメスープと白魚のムニエルと野菜炒めを作り終えると、オレははやる気持ちを抑えて、料理を食卓に並べた。
「できましたよ。夕飯にしましょう」
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