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あやめもしらぬこいもするかな =SIDE S=
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ずっと好きでい続けてくれたと聞いて、舞い上がるほどに嬉しくて、西覇が料理をつくる間ぼんやりとしてしまった。
これは、夢じゃないのか。
食卓に置かれたあたたそうな料理を立ち上がった見つめる。
俺は騙されてはいないだろうか。
抱かれたあの感覚は嘘ではなかったってのに、世界中に騙されているように感じる。
ふわふわとした、浮遊感に似た幸せな感覚。
「できあがりましたよ。夕食にしましょう」
声をかけられて、俺は西覇が用意してくれた温かな夕飯を眺める。
「こないだもだけど、料理、うまいな」
「ほとんど僕が、家で料理係だったからね」
「弁当、自分で作らなかったのが不思議だったよ」
「…………酔って作った母の弁当が嬉しかったのだと、前にもいいましたよね」
「そう、だったな」
懐かしい話をしながら、西覇の料理を眺める。
野菜炒めとメインは白魚のムニエル、コンソメスープの胃からそそられるかおりに目を伏せる。
こんなふうにあったかな空気をもう一度かんじられるようになるなんて思わなかった。
思えなかったけども、それでもあきらめきれなかった。
「おいしそうだ、いただきます」
海外に行ったと言われた時は、さすがに駄目かと思ったけど。だけど、諦めなくて良かった。
野菜炒めを口に運ぶと油を感じないくらいさっぱりした味でついつい箸がすすむ。
「んめえ、な」
むしゃむしゃと食うと、嬉しそうな西覇の眼鏡の奥の瞳にぶつかる。
「まだ、成春の好みの味はわからないから。何がすきなのか、少しづつ覚えるよ」
「…………西覇が作るならなんでもうめえよ」
「僕は完璧主義なんで、完全に好みの味にしたいんですよ。食事も、貴方もね。覚悟してくださいね」
ふわりと昔のような、綺麗な笑顔にぶつかり俺は身体の温度をあげて、食事を口に運んでいった。
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