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001
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午前の授業の終わりを知らせるチャイムが鳴った。
待ってましたとばかりに生徒たちは席を立つ。
教室で弁当を広げる生徒もいれば、食堂で争奪戦を繰り広げる生徒もいる。
飛香はそのどちらにも属さず、屋上にいた。
普段立ち入りを禁止されている屋上に他の影はない。
教師たちですら、屋上の存在を忘れているだろう。
だからこそ居心地のいい秘密の場所なのだが。
「おーい、飛香ー」
「……………」
「やっぱここに居た。ほれ、昼メシ」
無造作に放り出されたメロンパンを片手で受け取り、さも当たり前のように隣に腰かけた友人を飛香は溜息と共に睨みつけた。
「また来たのかよ。呼んでねーんだけど」
「そんなこと言うなって。誰にも見つかってないんだし、いいだろ?それに、ほら、おまえ放っておいたら昼メシ抜いちゃうじゃんよ。俺ってやっさしぃー」
「うるせえよ、バカズマ」
定着した呼び名を吐き捨てると、飛香はパンの袋を豪快に開けた。
文句を言いながらも差し入れに被りつく飛香を、友人ーーー和眞は満足気に見遣った。
俯き加減の横顔は大人びているが、幼さを残す顔立ちはまだ成長途中の色香を放っている。
美形の部類に入る飛香の横顔を食い入るように見つめてから、和眞は盛大に溜息を吐いた。
「おまえ…そんな余裕ぶっこいてていいのかね。そろそろ出席日数やばいんじゃねえの?」
「数回サボったくらいで大袈裟なんだよ。成績は悪くねえんだから大目にみろっつーの」
「まあまあ。二学期になってから連続でサボるようになって、担任も心配してるんだろ」
「……………」
「家に連絡されるのも困るんだろ?サボるのもほどほどにしとけよ、この不良少年」
「……おまえにだけは言われたくない」
不本意な言葉を聞き、飛香はジトッと相手を睨みつけた。
日本人特有の黒髪の飛香に反して、横でおどける和眞の髪は日本人らしからぬ色をしていた。
自分で染めたのであろう茶髪は遠目で見ても傷みきっている。
休み時間の度に屋上に現れるのは、生活指導の教師から逃れるためでもあるのだろう。
穴だらけの耳につけられた大量のピアスを数えて、飛香は呆れたように目を細めた。
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