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「……で、一体どういう心境の変化なわけ?」
「は?何が」
とうとう来たか、と頭の隅で苦い思いを抱きながら、素知らぬふりをする。
飛香はなるべく平静を装って和眞の声を聞いた。
「とぼけんなよ。あんっっだけオジサンたちに迷惑かけられないって優等生してたおまえが、サボり魔になってるのは何でだって聞いてんだよ」
問い詰めるように距離を縮められ、飛香は食べかけのメロンパンを落としかけた。
ギクっとしたが、それでも話す気にはならない。
「……別に。何でもねえよ」
「うそつけ。それが何でもないってヤツの顔かよ」
「……………」
「……………」
「……………」
「……………」
じっと横顔を見つめられ、耐え兼ねた飛香は舌打ちした。
居心地の悪さを誤魔化すように頭を掻く。
嘘をつくのは苦手だった。
それでも黙っていると、痺れを切らした和眞が小さく溜息を吐いた。
「順調なの?お腹の子」
不意をついた質問に微かに動揺する。
飛香はそれを隠すように顔を伏せた。
「三ヶ月だっけ?もう安定期入ってるよな」
「……うん」
「最初聞いた時はびっくりしたけどさ、無事に産まれてきてほしいよなあ」
「……そうだな」
「……………おい」
「……なに」
何を言われるのか想像して、飛香は表情を崩さないまま頬杖をついた。
フェンスに背を預け、残りの腕をダラーと空中に投げ出す。
清々しいほどの青空から横の友人に視線を移せば、やはり難しそうな顔で眉をひそめていた。
「なに気にしてんだよ。子供ができたからって、今更あの二人が飛香を存外に扱ったりするわけないだろ?」
《あの二人》と聞いて、飛香は瞬間的に家にいるはずの二人を思い浮かべた。
産まれてくる子供を想いながら微笑む姿を想像して、ぎゅっと目を瞑る。
「そんなのわかってるよ。相変わらず二人は優しいし、子供が産まれても今まで通り接してくれると思う」
「だったら、何をそんなに悩んでるんだよ。授業までサボって…おまえらしくねえよ」
「別に悩みなんてないって。ただ、気が抜けたっつーかさ….」
「……?」
「……今まで、おじさんとおばさんの負担になりたくなくていい息子を演じてきたけど…それも必要なくなるんだと思ったら、優等生してるのがバカバカしくなったんだよ」
言いづらそうにもそもそとメロンパンを完食した飛香は、二人の顔を思い浮かべてぎゅっと唇を引き結んだ。
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