アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
004
-
それから暫く何事もなかったかのように何気ない会話が続き、気が付けば昼休みの終了を知らせるチャイムな鳴っていた。
午後の授業は出るつもりでいた飛香は重い腰を上げる。
サボりたいと口を尖らせる和眞を無視して屋上から去ろうとした時だった。
ぐらりと地面が揺れる。
何事かとフェンスにしがみ付いていると、それはすぐにおさまった。
「また地震か….」
「最近多くね?」
「そうだな」
特に驚いた様子もなく、飛香は地面に腰を降ろした。
なんとなく教室に戻るのが面倒になったからだ。
ざわつき始めた校舎の気配に耳を傾ける。
騒然していた校舎内も、暫くすると静寂を取り戻していった。
「そういや、聞いたか?あの噂…」
「噂?」
「地震の後に行方不明者がでるっていう話だよ。最近じゃ、神隠しなんて言われてるんだぜ」
焼きそばパンを口に放り込んだ後、手慣れた手つきで煙草に火を点けた和眞は不吉な話題を持ち出した。
神隠し、と聞いて飛香は怪訝そうに顔を歪める。
ーーー神隠し。
それは、ここ数年で急増した行方不明者たちに関わる事件の名称だ。
十年ほど前から多発している地震。
その後に、必ずと言っていいほど姿を眩ます人が現れることから名付けられた。
行方不明者たちに関係性はなく、まるで神様がランダムに選んでいるようだと誰かが言った。
何の前触れもなく、跡形もなく消えるから、まるで神隠しだと。
発見された者は未だにおらず、謎の現象として世間を騒がせている。
「おまえはそっち系の話、好きだよな。神隠しなんて都市伝説だろ」
「いやいや、実際いなくなったヤツだっているじゃん。隣のクラスの赤松とか、もう一週間は学校来てないぜ?」
「それは胃腸炎で入院してるからだ」
「えーと、じゃあ…」
そういった類の話が得意ではない飛香が片耳を塞ごうとした時だった。
ふと不吉な言葉を聞き取り、飲んでいたミルクティーを落としかける。
「今、何て……?」
「だから、飛香が懐いてた先輩いただろ?背が高くて爽やかな…って、もしかして、知らないのか?」
何を、とは言い返せなかった。
頭の中で嫌な考えが浮かんでは消える。
脈打つ心臓を押さえるようにして、飛香は恐る恐る和眞には向き直った。
そんな飛香の様子に戸惑いながら、覚悟を決めたらしい和眞は点けたばかりの煙草を足で踏み消すと、言いづらそうに口を開いた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
6 / 74