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006
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《よっ、久しぶり。元気か?》
ある日の朝、飛香の携帯にそんなメールが届いていた。
『お、いたいた。ごめんな、待たせたか?』
懐かしい響きの低音ボイスに声をかけられ、駅前で携帯を弄っていた飛香は後ろを振り向いた。
すらりとした長身に、紺のスーツを着こなした青いネクタイの男が飛香を見下ろしていた。
『いや、それほど……って、あんた何でスーツなんだよ。今日は休みじゃなかったのかよ』
『…飛香ー、そこは可愛く「私も今来たとこですぅ」とか言ってくれよなぁ。それに、久しぶりに会った先輩に対して第一声がそれか?』
『何なんだよ、そのいかにもバカップルぽいノリは!間違ってもそんなこと言わねえよ』
『えー、先輩と後輩の待ち合わせっつーと、萌えるシチュエーションだろ?』
『あんたは俺が男だって事をまさか忘れたわけじゃないよな』
『え?』
『おい!……っはは』
くだらないやりとりで昔を思い出した飛香は堪らなくなって吹き出した。
心なしか、スーツの男も笑いを堪えてるように見える。
『っんとに、何も変わってないな』
『そうか?これでも少しは大人になったつもりだったんだけどな』
首を竦めてみせた男ーーー大樹は、スーツを見せびらかすようにネクタイを締め直した。
学生時代に比べて顔付きや物腰が大人びて見えるが、根本的なところは変わっていないのだろう。
スーツを着ていても昔の面影がしっかりと残っていて、飛香は懐かしむように目を細めた。
飛香が高校に入学した時、部活の勧誘で声をかけてきたのが当時三年生の大樹だった。
それがキッカケで、殆ど一方的に大樹が飛香を構うようになり、いつの間にか打ち解けていった。
スポーツ万能、成績優秀、身長は高く、顔も悪くない。
真面目で気取ったところがなく、たまに強引だけどどこか憎めない。
必要以上に人と関わろうとしていなかった飛香は、そんな大樹に次第に心を開いていった。
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