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「…………どう、なってんだよ……」
掠れた声は剥き出しの鉄筋コンクリートに吸い込まれて消えた。
寂れた廃墟を夕闇が照らし、辺りで一番高い塔のような場所で飛香はそれを見下ろしていた。
背後を振り返るとあるはずの扉がなく、かわりに今自分が立っているのがとても不安定な場所だと思い知らされる。
支えもなく立っているのが不思議なほど細い鉄筋の上にいたのだ。
「なっ…はあ?!ここ、…大樹の、あれ!?」
目まぐるしい異変に頭が追い付かず、下を覗き見て眩暈を起こす。
何が起こったのかわからず放心していると、右手にビリッとした痛みが走って飛香は腕を振り下ろした。
「アッツ…?!」
握り締めていた熱源は空中に放り出され、見覚えのある紙きれが青い炎に包まれる。
それが大地の絵だとわかる頃にはもう遅く、灰になって地面に落ちていった。
燃え尽きるまで呆然とそれを眺めていた飛香は暫く放心した後、火傷した右手に視線を落とす。
じくじくと痛む傷がこれは現実なのだと告げていた。
(夢じゃ、ない?)
ズキン
深く考えるよりも先に頭痛に襲われ、ぎゅっと唇を噛み締める。
胃液が喉までせり上がってきて、酷い眩暈がした。
二日酔いと乗り物酔いが被さったような最悪の気分だった。
(や、べ……気持ち悪、い)
どうしようもない不安と恐怖で吐き気がした。
人は心の底から恐怖を感じた時、意識を手放してしまうものだ。
理解した瞬間、ぐらりと身体が傾く。
「………ッ!!」
見覚えのない景色が暗転し、飛香の意識はそこで途絶えた。
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