アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
013
-
月明かりが闇を照らす夜。
廃墟となった街に二つの人影があった。
「なぁ、ハオ。ホントにここであってんの?一匹も見当たらないけど」
静かな廃墟に凛とした声が響き渡る。
声の主はガムを膨らませて暇を持て余している様子だ。
深く被ったフードから覗く顔立ちはまだ幼く、不機嫌そうに横を歩く男を睨みつける。
「潜んでる気配はしますから、何処かに隠れてるんじゃないですか」
ハオと呼ばれた男は素っ気なくそう答えると、糸目を更に細めた。
長い後ろ髪を一つに束ね、すらりとした長身に黒のコートがよく栄える。
少年ーーーウィルは味のしなくなったガムを吐き捨てると、心底面倒そうに伸びをした。
「こんな依頼、ナギかユーリスあたりに任せとけばいいのに。何でオレが…」
「ナギだと見境なしに殺しまくって、依頼主の希望を果たすのは無理です。今回はあくまでも捕縛が目的ですから」
「ユーリスは?」
「部屋にいなかったんで仕方ないでしょう」
「じゃあ、サワとか」
「論外です」
「…まぁ、わかるけど」
不本意なのは自分だとでも言うように強い口調で微笑んだハオを見て、ウィルは顔を引きつらせた。
どうやら今回の依頼をまともにこなせそうなのは二人だけだったらしい。
ウィルは諦めたように肩を竦めた。
「でも、金持ちの考えることはわっかんないなぁ。死体になった自分の娘捕まえてどうするんだ?」
「さぁ。人間の考える事なんて俺にはわかりません。わかりたくもないですが」
「ふぅん。いつか生き返るとでも思ってんのかな。シキになったら最後、二度と元の姿には戻れないのにさ」
ウィルは新しいガムを口に放り込むと、無言でリボルバーを構えた。
視線の先には暗闇で光る赤い瞳が二つ。
頬まで裂けた唇から鋭い牙が覗き、赤黒く変色した肌がその者が人間ではないと物語っている。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
15 / 74