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匂いに近付いていくと、次第に遭遇するシキの数も増えていく。
暫く歩いていると血の香りに引き寄せられた複数のシキがある一点に集中しているのを見つけ、ウィルは目を凝らした。
「あーあ。もう手遅れだったか」
「いや…上です」
ハオの視線を追ったウィルは、ぎょっと目を見開いた。
今にも腐り落ちそうな時計塔の上で、人間の男がぶら下がるように横たわっていたからだ。
剥き出しの鉄筋に辛うじて引っかかっているような、そんな状態だった。
「うーわ。よくあんなとこで器用に寝れるよな」
「あれだと奴らに食われるのも時間の問題ですね」
「え、助けないの?」
「そんな依頼引き受けてませんが」
「そりゃそうだけど。でも、オレはちょっと興味あるな。……あの人間の血、すっげぇうまそうだから」
風で運ばれてきた甘い血の香りに上唇を舐めると、ウィルは不敵に微笑んだ。
ギラリと赤い瞳が闇に輝く。
「…好きにしてください。どうやら依頼品もあの中にいるようですから」
手元の写真と特徴が一致するシキが群れの中に紛れているのを確認し、ハオはリボルバーを構えた。
最初からこれを狙って人間の血を追っていたのだろう。
生者に引き寄せられるシキの習性を考えると、闇雲に街を探索するより依頼品を見つける可能性は高い。
ハオの計算した行動にウィルは口笛を鳴らした。
「これで地道に探す手間も省けたってことか」
「ですが、あれだけ群がられると流石に面倒ですね」
ハオはチラッとウィルを盗み見た。
それに気付いたウィルは、ゲッと顔を歪めると盛大に溜め息を吐く。
「……わかった。わかったよ!オトリ役やればいいんだろ?ったくメンドクセー」
渋々といった感じで前に出たウィルは、フードを深く被り直すとシキの群れに向かって何発か撃ち込んだ。
銃声が廃墟に響き渡り、無数の弾がシキに命中する。
その瞬間、ギラついた瞳孔が一斉にウィルを捉えた。
「おーにさんこーちら、てーのなるほーうへ」
余裕の笑みを浮かべたウィルは鼻歌交じりにそう言うと、まるで遠足に来た子供達を誘導するかのように手招きした。
ウィルを視界に捉えたシキの群れは雪崩れを起こして走り出す。
廃墟の陰からウィルを見送った後、ハオは後列にいたシキに何発か撃ち込み注意を惹いた。
数匹いるシキの中に目的の依頼品を確認すると、もはや面影は殆ど消え去っているそのシキに向かって引き金を弾く。
手足を容赦なく撃つと、シキは奇声を発して地面に崩れ落ちた。
他のシキが襲いかかってくるのをひらりと躱し、頭を撃ち抜く。
それを何度か繰り返し周りが静かになった頃、ハオは目的のシキに近付いた。
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