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「ん……」
肌に直接伝わる冷たいコンクリートの感触で飛香は目を覚ました。
ずっと同じ体勢で横になっていたのか、身体中が悲鳴を上げている。
身体を起こそうとして腕が動かないことに気付いた飛香は、次第に意識を覚醒させた。
腕と足を縄で拘束されていて、身動きがとれない。
頭が混乱していた。
どうしてこうなったのか思い出せないのだ。
「あ、起きた」
近くで声がして顔を上げると、飛香の視界いっぱいに金髪が広がった。
間近で見下ろされている状態に声が詰まる。
相手の髪が飛香の鼻先に触れそうなくらい近いのに、長い前髪に邪魔されて表情は見えなかった。
「だ、誰……」
勇気を振り絞ってそう聞くと、金髪の男はすっと顔を離して怠そうに近くのソファに腰かけた。
質問に答える気がないようで、それから暫く沈黙が続く。
そこで漸く周りを見渡した飛香は自分が見覚えのない部屋にいることに気が付いた。
天井が高く無駄に広い空間に赤い絨毯とソファが置かれていて、物は少ないが高そうなインテリアが飾られた洋風な広間だった。
「ここって……」
状況を把握できずに混乱していると、背後で扉が乱暴に開かれ、飛香はビクッと肩を震わせた。
「クソッ!!あの陰険ジジィ、次こそ殺してやる!!」
苛立ちを露わに大股で部屋に入ってきた男は、近くにあった装飾棚を蹴り倒すと敵意剥き出しのまま赤い髪を掻き上げた。
その眉間には皺が寄っていて、誰が見ても機嫌が悪いことがわかる。
本来なら美形の類に入る顔立ちも、今は苛立ちと怒りで鬼のような形相に変貌していた。
「あーあ……。物壊すとイヴァンに怒られるよ」
「今その名を口にするんじゃねぇ」
「ふぅん。もう怒られた後だった?」
「うるせぇ!!」
乱暴な口調の赤髪の男を気にする様子もなく、金髪の男は再び口を閉ざした。
普段から口数が少ないのか、赤髪の男は沈黙に違和感を感じていないようで、そのまま向かいのソファに身体を沈めた。
呆気にとられてその様子を見ていた飛香だが、やがて視線に気付いた赤髪の男と目が合ってしまう。
瞬間、ドキリと心臓が跳ねる。
「おい、サワ。こいつは何だ?」
「…知らない。ウィルが置いてったみたいだけど」
「ふぅん。あいつの新しいエサか」
何かが男の興味を惹いたのか、赤髪の男が身を乗り出して飛香に近付いてくる。
気性の荒さを目の当たりにしたからなのか、それとも本能で感じとったのか。
危機感を覚えた飛香は身体を硬直させた。
「な、んだよ……」
「……へえ?」
威圧的な態度に怯みそうになりながらも睨みつけると、男は面白そうに口の端を吊り上げた。
そして縮こまる飛香を品定めするように一通り見回すと、すっと目を細める。
「何だ……お前」
「え…、?!」
男が驚いたように声を弾ませたのと同時に、乱暴に胸ぐらを掴まれる。
突然の事で声も出せなかった飛香だが、すんとニオイを嗅がれて我に返った。
「な、な…っ!!」
「おまえ……すげぇ美味そうなニオイがする」
ギラついた赤い瞳に見つめられ、蛇に睨まれた蛙のように思考まで停止してしまう。
飛香が驚きを通り越して言葉を失っていると、第三者の声で意識は逸らされた。
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