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飛香は一呼吸置くと、改めて周りを見渡した。
食い入るような視線が痛い。
思わず畏縮してしまいそうになりながら、飛香は懸命に声を振り絞った。
「っアンタら、誰なんだ。何の目的があって俺を……」
「そんなに身構えるなって。オレたちはアスカを助けてやったんだぜ」
「助けた…?」
「時計塔にぶら下がってたの、忘れたのか?」
ウィルは愉快そうにケタケタと笑い、頭上を指差した。
気を失う前の浮遊感を思い出し、ぶるっと身震いする。
落ちたかと思ったが、ここに居るということはそういう事なのだろう。
「運がよかったですね。殆どの異端者は発見される前にシキに襲われてオワリですから」
「……………」
ハオの淡々とした物言いに言葉を飲み込む。
素直に礼を言う気になれなかったのは、不信感を拭い切れなかったからだ。
(コイツら……一体何者なんだ?)
異端者という単語が飛香を指し、よそ者と言う意味合いを持つことはなくとなく理解した。
シキというのはあの化け物のことだろう。
問題なのは、なぜそんなことを知っているのかということだ。
今の状況で、目の前の彼らが善人である保証はどこにもない。
寧ろ、飛香の中では危険人物の印象が強く残っていた。
目が覚めたら拘束されていたり、ナイフで脅されたら仕方のないことだと思うが。
「まあ安心しなよ。シェルターの中にいる限りシキは襲ってこないからさ」
「シェルター…?」
不思議そうにする飛香に、ウィルは「街を囲む大きな塀の事だ」と説明した。
飛香の住む地域でそんな話は聞いた事も見た事もなく、嫌な予感が脳裏を過る。
大樹の家にいたはずなのにいつの間にか知らない場所に移動するという不思議な現象を体験した後だったからか、常識では測りきれない何かが起きていると直感していた。
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