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021
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(とにかく、一度帰らないと……)
どれだけの時間、気絶していたのかわからない。
化け物の事も、彼らの事も、まだ何一つ状況を呑み込めていなかったが、家に帰れば何とかなると飛香は思っていた。
考えるのはそれからがいい。
だが、そんな飛香の思考を読みとったかのように、ハオがバッサリと言い放った。
「帰るつもりなら、無理ですよ」
「え…?」
遠慮のない冷たい声にドキリとする。
飛香が顔を上げると、ハオは手の中で弄んでいるナイフに視線を落としていた。
「黒の世界(シュヴァルツ)から白の世界(ヴァイス)に干渉する術はありません。だから、異端者が元の世界に帰る方法はない」
「は?何言って……」
「わかりやすく言うと、《君は帰れない》って事です」
「ーーーそれって、どういう……」
少しの揺るぎもなく断言されてしまい、飛香は怪訝そうに眉を寄せた。
色んな事が起こったせいで気持ちに余裕がなく、苛立ちが募る。
「意味わかんねえ。帰れないって、なんでだよ」
「今の説明でわからなかったんですか?……ここは君が居た世界とは違うんです。異世界ってやつですよ」
「……はあ?」
「君がいた世界を、白の世界(ヴァイス)。俺たちのいるこの世界を、黒の世界(シュヴァルツ)。ずっと昔の異端者が名付けたそうですよ 」
聞きなれない単語の連続に目を回しそうになる。
とんでもない事を言われているという自覚はあったが、理解することを拒絶しているかのように言葉がするりと抜けていく。
「あんた、頭大丈夫か?言ってる事おかしいよ」
「おかしいのは君の頭じゃないんですか?何度も言わせないでください。ここは異世界、だから君は帰れない。わかりました?」
「……………」
一気にまくし立てたハオは、それから興味が失せたように再びナイフを弄りだした。
これ以上説明してやる気はないとでもいうかのように、背中が話しかけるなと語っている。
(冗談……だろ?)
問いかけは声にならず、どくんと心臓が早鐘のように打つ。
「からかってるんじゃ、ないよな」
キッと睨みつければハオは何も答えず、代わりに第三者の声が降ってきた。
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