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「……着いたよ」
「………っ!?」
半ば強引に手を引かれて連れて来られたのは、巨大な壁の前だった。
灰色のコンクリートにも似た材質のそれは、飛香の頭上何百メートルも先にそびえ立っている。
タワーマンションよりも高いかもしれない壁を目の前にして、飛香は顔が引き攣るのを感じた。
飛香の住んでいる地域に、こんな建築物があるはずがないからだ。
そして何より、ここに辿り着くまでに見た街の風景にも驚いていた。
高低差にバラつきのある石造りの家並みに、後からとってつけられたかのような建物。
髪と肌の色が違う人々が当たり前のように路上を行き交い、その服装には統一性がない。
様々な人種が入り乱れている感じがして、飛香は驚愕した。
(どこなんだよ……ここは)
ゴチャゴチャした街並みの雰囲気に、中世ファンタジーを思い浮かべる。
本当に知らない土地にいるのだと実感して、飛香は急に心細くなった。
「なーに今更ビビってんだ?さっきまでの強気な態度はどうしたよ。信じねえっつったのはテメェだろうが。あ?」
飛香たちに着いてきたナギが挑発するように喉の奥で笑った。
他にもウィルにハオ、サワまで着いてきている。
「…っ、ここが俺の知らない場所だっていうのはわかった。でも、異世界だなんて」
「……そう。じゃあ、上に行こうか」
「上…?」
「ほら、俺に掴まって」
戸惑う飛香の返答を待たず、ユーリスは強引に飛香の腰を抱き寄せると、強く地面を蹴った。
瞬間、身体を襲う浮遊感。
飛んでいる、と自覚するまで数秒かかった。
悲鳴が喉を通る前に、ユーリスが壁の出っ張り部分に手をかける。
重力が身体に戻り、飛香はヒュッと声にならない声を漏らした。
「なッ、なん、え?!何が、」
「まあまあ、落ち着きなよ。離したりしないから」
「はっ、………!!」
再び襲ってきた浮遊感に驚き、咄嗟にしがみつく。
「しっかり掴まってないと落ちちゃうよ?」と耳元で囁き、ユーリスは再び宙を舞った。
人間離れした跳躍力に驚く暇もなく、ただ恐怖と不安だけが全身を支配していく。
時計塔での出来事もあり、飛香は高所恐怖症になりそうだと頭の隅で思った。
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