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浮遊感に必死に耐え続けていると、いつの間にか頂上に着いていたらしい。
足の裏に地面の感触を感じると、飛香はその場で腰を抜かした。
「情けねえな。こんなんでへばったのかよ」
「!?な、なんで、どうやって」
先回りしていたナギに驚いて口を開閉していると、壁の下にいたはずのメンバーがぞくぞくと姿を現した。
ユーリスと同じように壁を飛んできたのだとわかり、何も言えなくなる。
どう考えても、人間業ではないからだ。
「久しぶりだなー、この眺め」
「……ふぁあ」
気持ち良さそうに伸びするウィルの横で、サワが大きな欠伸をする。
ナギは壁の外側に足を投げ出すように座り込み、ハオは相変わらずナイフを弄っている。
呆然とする飛香の肩を抱いたユーリスは、もう片方の腕で壁の真下を指差した。
「……見える?」
「え、……?」
「…ウィル、望遠鏡貸して。持ってきてるんだろ?」
「はいはい」
投げ出された望遠鏡を受け取り、ユーリスの様子を伺いながら飛香は恐る恐るそれを覗いた。
荒廃した景色がどこまでも続き、その中に無数の人影を見つける。
ズームしてみると、見覚えのある風貌に飛香は息を飲んだ。
「見えた?あれ、全部シキだから」
「なっ…!?」
にっこりと微笑んだユーリスの言葉が信じられず、再度望遠鏡を覗き込む。
爛れた肌に、赤く光る瞳。
不規則に蠢くシキの集団に、飛香はただならぬ恐怖を感じた。
「この壁の向こう側に、生きている人間は存在しない。シキがぜーんぶ、食べちゃったからね」
「た、食べ、る……って」
声を震わせる飛鳥に、ハオが追い打ちをかける。
「喰らうんですよ、シキは生者の血肉を。そして、喰われた人間は同じシキとして蘇る」
「え…?」
「シキっていうのは、ある悪性のウイルスに感染して死んだ人間の事なんですよ」
ハオの言葉が理解できず反射的に振り返る。
周りの様子は至って冷静で、狼狽えているのは飛鳥だけだった。
「ちょ、待てよ……!あの化け物、人間なのか!?」
「《元》人間です」
「っなんだよそれ…。ウイルスとか、感染とか……意味わかんねえよ」
衝撃が強すぎて何にショックを受けているのかもわからず、飛鳥は黙って俯いた。
今まで聞いた話が全て本当なら、ここは確かに異世界で、シキという化け物が存在して、帰る方法はないということになる。
実際に見せつけられては、飛香も認めるしかなかった。
夢だと現実逃避するには、頬を撫でる風があまりにもリアルすぎたから。
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